第76章 *第1タワー*
おぞましい声が下から微かに聞こえるなか、ヴィルたちは黙々と石の階段を降りて最下層を目指していた
そんなとき、ふと思い出したように顔を上げたヴィルは一度足を止めて後ろを振り返った
ヴィル『再会してから話すタイミングがないまま、敵地に乗り込んできちゃったけど..今のうちに、あんたたちに言っておきたいことがあるわ』
ルーク『なんだい?毒の君』
優しく問いかけるルークの穏やかな表情とは対照的に、ヴィルの表情は真剣で、それでいて僅かに怒りを孕んでいた
ヴィル『まずは、ルーク。あんた、副寮長のくせにポムフィオーレを放り出してきたわね?常々副寮長らしいことはまるでしない男だとは思ってた。でも..S.T.X.Yに襲撃されて学園全体が混乱しているであろう時に、独断で無責任な行動を取るなんて、寮長として看過できない行為よ』
ルーク『...』
エペル『ま、待ってくださいヴィルサン!ルークサンはヴィルサンのために危険を承知で..!』
慌ててルークの弁明をしようと口を開くが、"だまらっしゃい"と一蹴された
ヴィル『あたしが連れ去られたことと、ルークが副寮長の責任を放り出すことは全くの別問題。
現にここへ来ていない他の副寮長は今頃、寮長代理としての役目を果たし、寮をまとめているはず。
感情のままに寮を放り出すような責任感のない男を、副寮長に選んだ自分の見る目のなさが恥ずかしい』
エペル『ちょっ..流石にそんな言い方はないんじゃねぇのか!?』
ルーク『いいんだ、エペルくん。ヴィルの怒りはもっともさ。学園を抜け出したときに、副寮長を罷免される覚悟はできているよ』
今にも食って掛かりそうなエペルをそっと手で制すると、そう言われるのを分かっていたかのように俯いた
エペル『そ、そんな..!』
ヴィル『次に、エペルとユウ、そしてレイラ。あんたたちも自分がどれだけ無謀な行動をしたか分かってる?
実力がないひよっこのヒーロー気取りは、誰のためにもならない。ハッキリ言って迷惑よ』
タルタロス内の冷気に負けないほどの冷たさを持った鋭い刃ような正論が3人の胸を深々と刺した
ユウ『(分かってたけど、グサッとくるなぁ)』
『ぅぅ..』