第73章 *海上フライト*
オルト『..君は本当に変わった人間だね。
今日はとても興味深いデータがとれたよ。ありがとう。それじゃあ、僕はそろそろ本部に戻らなくちゃ。ランチとディナーは12時と19時に手配したけど、時間を変更したければ、ドアの横にあるデバイスでオペレーターに連絡を。前方スクリーンに話しかけてもらえれば、バーチャルアシスタントが起動して、各種ゲームや映画などを楽しむことができるよ。暇つぶしにどうぞ』
ユウ『(戸惑うほどに好待遇だな)』
『(そういうのいいから、早くヴィルさんたちに会いたい)』
モヤッとした苛立ちが体の奥底から湧き上がる。それを誤魔化すように、エペルの腹にもう一度スリスリと顔を寄せた
エペル『(か、可愛い..)』
オルト『じゃあ、みんなの検査が終わるまでしばらく待っててね』
そう言うと、踵を返し部屋にユウたちを残してオルトは研究施設から立ち去っていった
『ぅ"〜!!』
エペル『わわっ、どうしたの?さっきよりも、うぐっ!腹押してる!潰れる!』
ユウ『レイラ!?どうしよう、すごい駄々っ子みたいになっちゃった』
オルトが出ていき部屋に4人だけとなった瞬間、突然腰に回していた腕の力を強め、まるで押しつぶすかのように腹に顔を押し付けられる苦しみにエペルは身悶えし、隣りに座っていたユウは初めてのことに戸惑うしかなかった
ただ一人、ルークだけはあることに気づいた様子で、3人の座るソファまで近寄った
ルーク『なるほど..兎の君、こちらへおいで』
『...』
ルーク『八つ当たりをしても構わないよ。だから、こちらへおいで』
そっと腕を広げる姿にユウとエペルはどういうことだと、顔を見合わせて首を傾げた
すると、少しの間を置いてエペルの膝から頭を上げて立ち上がると、真っ直ぐルークの元へと歩き、そのままポスっと顔を彼の胸に押し当てた
エペル『えっ!?ど、どういうこと..かな?』
驚くエペルをよそに、レイラは軽く足を鳴らしながら顔をグリグリと押し付けたり、握りこぶしでトントンとルークの胸を叩き始めた
叩くと言っても力はほとんど入っておらず、少しの振動が来るだけでなんの痛みも感じられないほどだった