第73章 *海上フライト*
オルト『ごめんね。基本的に被検体は、冷静に対話ができる状態じゃないことが殆どなんだ。だから双方の被害を最小限に抑えるため、まずは対象を確保。その後に事情聴取..っていう行動を取らざるを得ない。
オーバーブロットした魔法士は、理性を失った怪物も同然。欲望と妄執の塊と言っていい。自分の願いを叶えるためならどんな手段も厭わない。危険な存在だからね』
『『...』』
『(自分の願い..手段は厭わない..)』
ユウ『ん?どうしたの?』
『ううん。ユウのこと好きだなって思った』
ユウ『っ..//僕も好きだよ』
『んふふ..』
オルト『それに、これだけ短期間に近しい人間が連続でオーバーブロットするなんて、過去にもほとんど事例がない。S.T.Y.X側も警戒せざるを得なかったのさ。調査の結果、幸運にも全員が正常な状態に戻っていたことが証明されたから良かったものの..最悪の事態も想定できたからね。
オーバーブロットした本人も、側にいた人間も、誰も命を失わなかったことは本当に幸運なことなんだよ』
ルーク『..そうだね。私達は本当に幸運だった。ヴィルがオーバーブロットしてしまったあの日のことを、夢に見て飛び起きることがある。鏡よりも、彼の500万人のマジカメフォロワーよりも近くで彼のことを見つめていたつもりだったのに..
私は彼の隣で、彼の何を見ていたんだろう..』
ハンターグリーンの瞳が切なげに細め、後悔と自責の念に包まれた彼の表情に、一同に胸の痛む思いが募る
『狩人さん..』
エペル『ルークサン..』
ルーク『すまない。後悔しても仕方のないことさ。それに..私が手を差し伸べたところで、彼のオーバーブロットを避けられたかどうかは分からない。もしかしたら救えたかもしれないなどと考えるのは、とんでもない思い上がりだ。
ヴィルの怒りは、絶望は、彼だけのもの..他のみんなもね』
オルト『ねえ。そこまで理解しているのに、何故ルーク・ハントさんはここへやってきたの?』
ルーク『私は"やれるだけのことはやった"と言うために来たんだ』
オルト『"やれるだけのことはやった"..?』
ルーク『ああ、他の誰のためでもない。私自身の美学のためさ』