第4章 蓋
「誰かと食べたの?たこ焼き」
「うん。多分ね。火傷して氷をーって誰かに言われたんだけど、思い出せないや。前の高校の友達とかかなぁ?」
口の中でたこ焼きをハフハフさせているひまりに由希がまたくすりと笑う。
そして自分もフーフーと荒熱を取りながら食べ始めた。
「由希の高校ってどんな感じなの?みんないい人たち?」
「そうだな…みんな良い人だよ。あと、本田さんって女の子がいるんだけど、きっとひまりといい友達になれるよ」
「へぇー。由希から草摩の人間以外の名前出るの珍しいね。どんな子なの?」
「うーん…家庭的で、包容力が凄い…かな」
「家庭的で包容力がすごい女子って嫁に最高じゃん」
「紫呉みたいなこと言うなよ。あ、あと彼女、十二支のことも知ってるよ」
「………ええぇぇえぇえええ?!」
ひまりの驚愕の叫びに道行く人たちの目線が2人に集まる。
その視線に2人で、騒いですみませんと頭を下げながら謝った後、ひまりが動揺を隠しきれないように冷や汗をかいて由希に向き直る。
「そ、それって大丈夫なの?草摩以外の人間が呪いのこと知ってるって…な、何でバレたの?っていうか慊人は?隠蔽は??」
早口で問いただすひまりに困ったように笑いながら、落ち着いて。と肩をポンポンと叩き話し始めた。
「まず、彼女は信頼できる人だから大丈夫だよ。去年の9月頃だったかな?色々あって、住む場所が無かった本田さんがうちに住んでたんだ。ほんの1週間程だったけど…。」
「紫呉ン家ってテラハかなんかなの?」
「てらは…?とりあえず、その時に偶然バレちゃって。呪いのこと広めるようだったら慊人に報告して、隠蔽になってただろうけど。うちを出てからもそんな感じ無いし、彼女の親友にも何も話してないみたいだし、慊人には言ってない」
「なんか…驚きポイントがありすぎて、混乱中だけど…。とりあえず大丈夫…ってことでイイんだよね?」
聞いた話を整理するように目を閉じて眉を顰めるひまりに、うん、そうだね。と由希は優しく微笑んだ。
由希の様子からして、その本田さんって女の子は物の怪憑きを知った所で彼らに偏見を持たず受け入れたんだろう。
ひまりはまだ見ぬ"本田さん"に少し興味が沸いた。
早く会ってみたいなぁ…と。