第4章 蓋
首を傾げるひまりに楽羅は何でもない!と笑顔で言うと、ひまりが手に取ろうとしていた水着を指差す。
「それいいよ!ひまりに絶対似合う!!」
トップスは肩紐がフリルのモノトーンのギンガムチェックに、黒のミニパンツスカートのビキニだった。
パンツスカートの横には切り込みが入っていて、チラチラと中のギンガムチェックが顔を出す。
ひまりも可愛いと思って手に取ったものだったので楽羅に言われて嬉しそうにその水着を見た。
「じゃあこれにしよっかな…楽羅もそれで決定?」
「うん!あー。これ着て夾君と海行きたいなぁー」
キラキラした目でオレンジの水着を見つめる彼女を、ひまりはまた羨ましいなぁ…と思った。
「おまたせー」
満足気な笑顔を見せるひまりと楽羅とは対照的に、由希と夾は座って待っていただけなのにドッと疲れた顔をしていた。
「お前ら服選ぶだけでどんだけ時間かけてんだよ…」
「服じゃないよ夾。み・ず・ぎ!」
「バッ!!おまっ!ワザとだろひまり!!!」
ゲラゲラ笑うひまりに怒鳴りつけると、夾はダブルデートの主催者に目線をうつす。
「ンで。どーすんだよ。お開きか?」
「まーだー。映画見よう!映画!」
楽羅はまた夾の腕に絡みついてズルズルと嫌がる彼を引っ張って行く。
映画館ってちょっと苦手だなぁ…。とひまりが思いながらついて行こうとした時、由希に手を持たれて歩みを止められた。
「由希?どうし…」
「しーっ」
由希はひまりの手を握ったまま、反対の手で人差し指を立てると口角を上げた唇に持っていった。
遠くなって行く夾と楽羅の背中とは別方向へと歩いて行く。
訳が分からず目をパチパチさせているひまりの手をひきながら。
「ひまり行きたいところない?初めてって言ってたよね、デート。ひまりの行きたい所に行こうよ」
優しい目でふわっと由希が笑うと、"初めて"を良い思い出にしてくれようとしている気遣いにひまりは自然と笑みが溢れる。
そしていきたい場所を考え始めた。