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ALIVE【果物籠】

第4章 蓋



草摩本家の大きな門を出て少し歩くと、ひまりの前を歩く潑春がジッと前を見据えた後、急に立ち止まった。

額が潑春の背中にぶつかり、どうしたの?と首を傾げているひまりを振り返るとじーっと彼女の顔を見る。


「…大丈夫?」

「ケガのこと?はとりがちゃんと包帯やり直してくれたし大丈夫だよ」


笑顔で答えるひまりに、それじゃないけど…と心の中で潑春は思った。


「はとりも…春にも感謝してる。本当ありがとう。あと、迷惑かけて…ゴメンね」


髪を耳に掛けながら申し訳なさそうに見上げる彼女に、潑春はその片頬に手を当てていた。


「…迷惑料、コレでいいけど?」


ひまりのキョトンとした瞳を見つめながらゆっくり顔を近付ける。
潑春が何をしようとしているのか理解したひまりが「ちょっ!」と驚いて避けようとした時にパァン!と言う乾いた音が響いた。

「いった…」と頭をさする潑春の背後には、ゴゴゴゴゴ…と音が聞こえそうな程に怒りを露わにして、肩で息をしている由希と夾が立っていた。


「春…おまえは!」

「俺らがいるの分かっててワザとやりやがっただろクソガキ!」


由希に腕を引っ張られ、潑春から離すように2人の後ろにされたひまりは苦笑いで「由希、夾…おはよう…」と呟いた。


潑春は大きな欠伸をすると「…2人とも、おはよう」と2人の雰囲気とは真逆の、気の抜けたような声で挨拶をする。


「…ひまりを使って俺らをからかうのは止めろよ…春」

由希が呆れたように潑春を見ると彼はキョトンとした顔をして首を傾げ


「…もらうかもって、言わなかったっけ?」


と、なにを今更と言わんばかりに、眉間にシワを寄せる由希と夾を気に留めることなく飄々としていた。

そのままひとつ伸びをすると、ひまりの頭を撫でてから「じゃあ、また」と言って3人の前を通り過ぎていく。

ほんの一瞬、潑春が陰りのある表情をしたのを見た由希が「ごめん、先に行ってて」とひまりに声を掛け、潑春を追いかけていった。


「由希…どうしたんだろ…」

不安な顔をするひまりに夾は「知らね。ほっとけ」と帰り道を歩き始める。

ひまりも後ろ髪を惹かれる思いだったが夾について歩いた。




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