• テキストサイズ

ALIVE【果物籠】

第1章 宴の始まり




ひまりはゆっくり頷くことしか出来なかった。


慊人は満足そうに微笑むと掴んでいた手を離して話を続けた。
爪が喰い込んでいた首からプツッと血が出始める。


「そうそう、ひまりは紫呉の家に住むことになったから。由希と夾も一緒だから仲良くするんだよ。でも勘違いはしちゃダメだよ?お前は絶対に仲間になれないように"出来て"るんだから」


…一緒に…住む?


考えもしなかった話に目を見開いて瞬きをすることすら忘れて、ひまりは驚いた。



「え…ちょっと…どういうこ…と?」


やっと絞り出せた声。
なぜ急にそんな話になったのか理解出来ない。

その問い掛けに応えることなく話を続ける。


「高校も由希達と同じところに通ってね。あと、僕が呼んだときはすぐに来ること。……高校を卒業するまでの間だけ自由にさせてあげる」


くすりと笑い、そう言い終えると元々座っていた机の横に戻り、気怠そうに座り込んだ。


「せいぜい自分が欠陥品だとバレないように頑張って?…特に由希にはね…ふふふっ。まあ、あの化け物とは仲間外れ同士傷の舐め合いが出来るかもしれないけど…あははっ」


ひまりは何も感じていないような無表情で慊人を見つめていた。



慊人は笑いながらひまりのその表情を見ると、面白くなさそうな顔をして、疲れたから出て行ってと机に突っ伏した。



何も言えずゆっくりと頭を下げると、部屋を出て扉を閉めた。

数歩歩いたところで胸を押さえてしゃがみ込む。



大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫。
たいしたことない。前を向け。
もっと強くなれ。落ち込むな。不安になるな。



心の中で自分に言い聞かせた。



1分ほどそうした後にサッと立ち上がると真ん前に紫呉が立っていた。びっくりし過ぎて後ろに倒れそうになったが、腕を掴まれたことで事なきを得た。



「わっ、びっ…ビックリしたぁ。し、紫呉…いつから…っていうか、あ、ありがとう」


「いえいえ。…泣いてるのかと…思ったけど??」






/ 617ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp