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ALIVE【果物籠】

第3章 とけていく




みんなに…由希に打ちあけようと思っていた。


でも、いざこうなると…


決心がつかない。



長い沈黙のように感じたが、時間にして5秒ほど。



先に視線を逸らしたのは春だった。


私の背後に目をやると、少し驚いたように「あ…」と呟く。


とりあえず助かった…
知り合いでもいるのだろうか…


その救世主を確認するために、振り返り春と同じ視線の先に目をやる。
そこにはダークブラウンの髪をなびかせ、"可憐"という言葉が似合うその彼女が涙を浮かべて驚いた顔をして歩いてきていた。



「ひまり…?ひまりなの…?本当に…?戻ってきたって…嘘じゃなかったんだ…っ」


「か…」

「楽羅姉だ…」



私が言うよりも先に春がその名を呼んだ。



楽羅は歩いていた足を急に早め、まるで猪のように猪突猛進に私に向かってくると、同一人物かと思うほどのドスの効いた声で叫び出す。


「今までドコで何してたんじゃゴルァァアアァア?!?!」


獲物を狙うかのようなその目で私を捕らえ、地面を蹴ってジャンプし、飛び蹴りをくらわそうと突き出した片足の靴の裏が見えた所でギリギリでかわす。


飛び蹴りが不発に終わった楽羅がコケることはなく、地に片膝と片手をつけていた。


「か、楽羅…ちょ、ちょっと落ち着い…て…」

「ひまりって…弱いけど、回避能力高いよな…昔から」


いつの間にか自分だけ道の端に逃げていた春が、すごーい。と拍手していて、オイ、コラ。と心の中で突っ込んだ。


ユラァーっと立ち上がった楽羅が振り返るのと同時に、その勢いに任せて右ストレートを繰り出して来たのを避けると、次は上段蹴り…と次々に攻撃を仕掛けてきた。


「連絡ぐらい寄越せやァアアァ?!」

「死ぬ!!当たったら死ぬから?!落ち着いて?!」



その声が届くはずもなく、繰り出される攻撃を必死に避けていたが、読み切れなかった拳にヤバッ!と反射的に目をギュッと閉じて衝撃に備えた。



——— が、衝撃が来ることはなく、ゆっくりと目を開けてみると春が片手で楽羅の拳を受け止めてくれていた。


「楽羅姉、落ち着いて…せっかく会えたひまりが…死ぬ…」


助かった…と安堵した後に「春…ありがとう…」とファインプレーな彼の背中を軽く叩いた。



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