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ALIVE【果物籠】

第11章 徒桜


「だからさ」もたれ掛かる体重を戻した紅葉。だが潑春は背は向けたまま、負担が軽くなった方向へ視線を向ける。紅葉の姿を映さない、気休め程度の視線であった。


「だからさ、前よりかは……少しは一緒に背負えるよ」


不安げで、それでいて僅かに誇るようにふふっと微笑んだ声に、潑春は瞳を閉じた。堪えるように一瞬歯噛みして、体を起こす。
膝を抱えたまま少しだけ揺れている背中に寄り掛かり、その肩口にこめかみをおくと、ふわふわの金髪が頬をくすぐった。
こうして、少しずつ変わっていく。人も。
少し前までは、むしろ守ってやらなきゃいけない存在のようだったのに、いつの間にか心も体も成長して。逞しくなって。
変わっていく。


「ひまりが好きだよ。どうしようもないくらい。だからずっと笑ってて欲しいし、夾の隣が、ひまりが一番笑える場所だってことも分かるから。なんの隔たりも無くなるように、全員が解放されてほしい」

「……うん」

「でも俺……夾の呪い、解けなきゃいいのにって、思ってる。例えひまりが泣く事になっても、それでもひまりが欲しい、って」


どっちも本音、なんだよなぁ。消え入りそうな呟きに、紅葉はまた「うん」とだけ短い返事を返した。
そして笑った。ふふっ、と穏やかに。


「キョーが解けなきゃいいのにって、ソレはサイテーだよねー」


潑春は相槌を打とうとして、ん?と目を丸めた。思っていたのと違う。なんか違う。


「それにさー、キョーが居なきゃ自分のトコにひまりが来るって思ってるのもゴウマンだし。ボク的にはユキのほーが可能性あるんじゃないかって思うケド。まぁそういう考えを持ってる時点でキョーに負けてるよね」


あ、言わなきゃよかった。なんだこの展開。傷口に塩……いや、傷口に岩塩ぶち込まれてザックザクに縫われた感じ。
とんでもない背中だったわ。包み込む布団のような見た目をして、飛び込んだら針山地獄だったみたいな。あ、因みにその針は返し付きね。食い込んでえぐってくるタイプのやつ。

めった刺しにされた潑春に、顔をあげる余力は残っていない。項垂れるように体重を預けていた。
精神やられたので。ちょっともう、これ以上はヤメテ。そんな風にしょぼくれた潑春の雰囲気に、紅葉はくすりと微笑む。



「でも、だから言ったでしょ」
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