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ALIVE【果物籠】

第11章 徒桜


ひまりと紅葉は、潑春の両側に無遠慮に寝転がる。彼に倣って同じように組んだ手を枕替わりにして。

常の反応が薄い潑春が、今は珍しく目を丸くしている。
伸ばしていた足を両側から蹴られているのだ。まるで邪魔だとでも言うように、ゲシゲシと押すように蹴るものだから、潑春の脚は物理的に肩身が狭くなって、二本の足を重ねる形になってしまう。
反射的にデカい図体までもが縮こまる様を見て、サンドウィッチのパン役を担う二人は、ケラケラと声を上げ始めた。

え、何。パン達の意図が分からず怪訝な顔をして見せる潑春に、パン達はパンらしく、彼を挟む力を強めてクスクスと笑う。


「無駄に長くて邪魔な足が生えたままでも、何にも変わらないよーって」

「そーそー。ハルのジャマな脚があってもなくても、ボク達が過ごしてきたものが無くなる訳じゃないんだから」


あ、でもボク"は"長かったんだ。片側のパンが潑春と差ほど変わらぬ自身の長い脚をパタパタと上下に動かす。
は、待てコラ。自慢か煽りか。パン戦争始めんぞ。反対側のパンが、彼等には到底届かぬ短い脚を折って地団駄を踏んだ。

肉体的にも精神的にも板挟み状態。この場では"具"と表現すべき人物は、ほんの僅かにだけ口端を上げて、瞑目した。騒がしいのに、不快さは微塵も感じない。

彼等だけが解けてしまった今でも、心地よさは変わらないのだ。

かなり一方的なパン戦争ではあるが、それが激化する前に潑春は上体を起こし、それぞれに一目ずつ視線を送ってから、白いアスファルトに目を向ける。


「まぁ、俺の予想、合ってたら。多分、順番がある」


潑春の言葉に、血の気の多い方のパンが、一時休戦だ。と細めた視線を向け、どういうこと?と彼の横に座った。
煽り系パンも同じく潑春の横に並び、彼が向ける白いアスファルトを見やる。

潑春は人差し指で地に丸を描いた。勿論、本当に描ける訳では無いので、ひまりと紅葉はその様子を見ながら頭の中に同じように描いていく。


「上を子とした干支の円。前にひまりが言ってたやつ。これで今回、解けたメンバーを順番に繋ぐ。とりあえず、四人を一組目として……」


酉、午、卯、子……。潑春の指先を目で追い、頭の中に図を描いていく。出来上がったのはトランプのダイヤの形。

うん。……で?首を傾けるひまりに潑春は淡々と続けた。
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