第3章 とけていく
「ん?…1日目…ゲームマスターは"犠牲者はなし"としか言ってなかったのに、ひまりは"夾も守られたし"って言ってたから…誰が襲われたかは人狼か、それを守った騎士しか知らない…」
ひまりがアレは失言でしたぁと頭を搔く。
持ってきたお菓子の中からピザのポテチを開けてボリボリ食べている潑春を、落ち込んでた夾が頭にハテナを浮かべて見る。
「ひまりが騎士だとは思わなかったのかよ?」
「うん。騎士は由希だから」
「それは私も分かったよ!」
ニコニコと、春の開けたポテチをひまりも摘みながら言うと、由希は目を見開いて驚き、紅葉はなんでなんでー?!と詰め寄った。
「だって由希、犠牲者が出なかった日、喜ぶ所なのに凄く嫌そうな顔してたもん」
「夾を守るのが…不本意、ってこと。もし由希が人狼だったら顔に出すヘマ…しない」
ひまりの話に潑春が補足を付け足して続ける。
「因みに、ひまり、騎士に守られるの分かってて夾狙ったってのも」
「え!なんで分かったの!」
ポテチを咥えながら驚くひまりに、周りは更に驚いた。
そんな所まで計算してたのこの子…。
話を聞いていた大人組2人も驚きを隠せないようだった。
「いやぁ、情報少なすぎる中で変に噛み殺しちゃうと、狂人に当たっちゃうかもしれないなぁって。そしたら不利になるじゃん?占い師って公言した夾のことは騎士が守るだろうから…。あと、夾ってすぐ顔に出るから傍観者側に行って欲しく無いなぁってのもあったよ」
「紫呉が狂人だったら…って可能性は考えなかったのかよ?ありえねぇ話じゃなかっただろ」
まだ精神的なショックから立ち直れていない夾が、有り得そうだった可能性を問いかけてみるが「それはナイナイ」と笑いながらひまりは手を振る。
「紫呉のあの性格だよ?自分の役職が"狂人"だったら、狂人を最大限に楽しむよ。あんな切羽詰まった所で"占い師"だなんて言わずに、最初の段階で占い師ですーって言うか、春みたいに本物の占い師が占い結果を伝えてから言うでしょ」
いやいや、もうコイツが人狼になった時点で俺らの負け決定してたようなもんだろ。
誰が勝てんだよ。こんなキレッキレの奴に…
夾は二度とひまりと人狼ゲームはしないと、再度心に誓った。