第3章 とけていく
その満面の笑みをひまりは潑春に向けると、潑春もそれを返すように口角をあげる。
そんな2人のやりとりに、頭にハテナを浮かべて目を細める夾だったが、ひまりが言った次の言葉で思考が停止した。
「ね!!ほんとに良かったよー!ね!春!」
「完全、勝利」
ひまりと潑春がハイタッチをしているのを夾はポカンとした顔で見ていた。
正に青天の霹靂というやつで、夾は意味がわからず情報処理が追いついていないようだった。
「え、お、お前ら…どういう…」
片方の口角と目をピクピクとさせて冷や汗をかきはじめる夾。
そんな夾に無邪気な笑顔を見せてピースをするひまり。その笑顔がまた可愛くて腹が立つ。
「勘違いしてるみたいだけど、人狼はひまり。で、俺、狂人」
潑春もひまりに寄り添うように肩を並べてピースをしながら暴露を始める。
ひまりと潑春のやりとりを見ていた由希は「やっぱり…」と深いため息を吐いていた。
「ちょ、ちょ、ちょっと…待て…ひまりは村人で、春が人狼で…俺たちの勝ちじゃ…」
「だーかーら!私が人狼だってば!春も人狼側の人間!」
「夾は見事、策略に…ハマりまシタ」
2人を交互に見ながら口をパクパクさせる夾。
勝利を確信していたのに、一気に奈落の底に落とされた気分だった。
「時間だ。吊すものを決めろ」
まだまだ脳内大混乱中の夾だったが、はとりは通常通りゲームマスターの仕事をする。
この状況の多数決で夾が勝つ道は無く…
「「夾くーん!」」
肩を並べてピースしていた2人が声を揃えて夾を指差す。
生存者が狂人と人狼という、人狼側の完全勝利の形でゲームは終わった。
「2度とやらねぇ。こんな精神削られるゲーム2度とやらねぇ」
三角座りをして落ち込んでいる夾の背中を叩きながらケラケラ笑うひまり。
「ひまりのエンギ凄かったね!ボク全然わからなかったよ!」
紅葉から褒められると嬉しそうに照れるが、そうだ!と潑春を見る。
「ねぇ!春はいつ私が人狼だって気付いたの??」
謎解きのはじまりはじまり…