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ALIVE【果物籠】

第10章 声に出さないまま


「サンタクロースもドラキュラも夜に活動する種族だからね!あまり変わりはないのだよ!それに今年のハロウィンは忙しさのあまり楽しむ余裕がなかったからね!!」


ははは!と高笑いする綾女に、要するにハロウィンでやりたかった仮装欲をクリスマスイベントで消化しにきたのか…と察したひまりと由希と夾は乾いた笑いでその姿を見つめた。


「それで出歩いてよく警察に捕まンなかったな」

「キョン吉…まだまだ青いね君は」


手の平を天に向けて、ふぅーと首を振る綾女に青筋を立てる夾は、今にも殴りかかりそうにワナワナと拳を握りしめる。
以前までの彼なら、その感情に任せて一発殴るくらいの事はしていたかもしれないが、少しは大人になったようだ。耐えている。


「周りの人間は自分自身の事の事などそこまで気にしていない物なのだよ。自意識過剰ってやつだね!まぁ、僕のこの王家の気品溢れ出んばかりのオーラには庶民は皆釘付けになるがね!」

「いや、どっちだよ。矛盾してんだよ」


半眼で呆れたようにツッコミを入れた夾は、ハァとため息を吐くと居間を出て行った。
玄関が開く音がしたということは、邪魔されたジョギングをやり直しに行ったらしい。ひまりはアイツ逃げやがって。と心の中で悪態をついていた。


「なんだいなんだい!神聖なるクリスマスにミカンにコタツで過ごすつもりかい!?余りにも辛気臭いじゃないか?!12月25日!かの有名なローマ教皇ピウス六世が産まれた日でもあるのだよ!?」

「え、だれ」

「ここはやはり、王子と姫は夜景が一望出来るレストランで食事をし、寒空の下で体を寄せ合いながらイルミネーションを眺めた後に大人の遊園地でトンネル開通イベ」


ここで由希の鉄拳が綾女の頭部に飛ぶ。ひまりと紫呉はその光景には慣れたもんで、ミカンを手に取り剥き始めていた。

頭をさする綾女が人差し指を立てて「ここに来たのは他でもない!」と真っ白なサンタ袋を漁り始める。
マントが邪魔だったようで、それを脱ぎ捨ててから取り出した物をひまりと由希の前に置いた。

クリスマスらしく赤い袋にゴールドのリボンで包装されているそれに、経験上嫌な予感しかしない。


「さぁ僕からのクリスマスプレゼントだよ!ずずいと開けてくれたまえ!!」


綾女は早く見てくれと急かすようにバンバンと机を叩いていた。
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