第3章 とけていく
紫呉は人狼ではなかった。
なのでゲームはまだ続行される。
「朝になった起きろ」
ゲームマスターのはとりが、そう声をかけると机に伏せていた生き残りメンバーが顔をあげる。
それぞれ緊張した面持ちだが、夾だけが噛み殺されたのは俺だ。としょぼくれながら起き上がる。
「今回犠牲者は無しだ」
その言葉に夾がよっしゃーとガッツポーズをする。
「次に吊す者を話し合え。今から3分間だ」
はとりはそう告げるとまた読みかけの本を開いて読み始めた。
「キシが守ったんだね!!カッコイイね!!」
「ねー!!狂人いなくなったし、夾も守られたし、村人有利じゃん!!」
紅葉とひまりが喜んでいるが、由希は一瞬だけ不服そうな顔をした。
その一瞬の表情の変化をひまりと潑春が見ていたが、特に突っ込む事なく会話に戻る。
「それで、ココから…どうやって決める?」
潑春が頬杖つきながら発言すると全員が悩み始めた。
「今のところ、夾が占い師って事しか分かってない……ってそうだ!夾、誰を占ったの??」
ひまりが夾を見ると親指で紅葉を指す。
「役職まではわかんねーけど、アホウサギは人狼じゃねーよ。」
「わーい!!だからボク、村人だよって言ったでしょー!」
腰に手を当ててエッヘンと胸を張る紅葉。
「その事デスガ…皆さんにお知らせがありマス」
潑春が発言すると、生存者5人が一斉に潑春を見た。
「実は俺、本物の…占い師」
その他全員が目を見開いた。
「俺の占い結果は…紅葉が人狼」
えええ!と潑春と夾以外の生存者が驚き、夾は額に青筋を浮かべて拳を握り締めていた。
「ハル酷い…ボク、村人なのに…」
「てめぇ!このクソガキ!俺が占い師だよ!そういうオメェが人狼じゃねーのかよ?!」
まさかの事態に由希は口に手を当て何かを考え始め、ひまりはガックリ机に突っ伏した。
「もーやだ。このゲーム…心臓が持たない」
「まず、私情挟みまくりそうな夾が…初回、由希を占わないのが不自然…」
「それは…一理ある」
潑春の推理に由希が小さく頷いたが、夾は納得しない様子で反論を始めた。