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ALIVE【果物籠】

第9章 ホダシ


景色が霞むほどの豪雨に、心配そうに外を眺めていたのは邦光だった。

看護師さんに叱責され、お菓子類は全て片したものの、部屋の中にはまだ匂いが残っている。

夾は雨の影響で相当身体がだるいのか、椅子に座り備え付けの机にその身を預けて目を閉じている。しっかりと眉を顰めて。


「雨も凄いし、キョーもしんどそうだし、そろそろ帰ろっかー?」


チラリと夾の様子を横目に見た紅葉が、今から出たら夕方までには帰れそうね。と潑春のスマホ画面を覗き込んでいた。
いや、ちょっと待て。と邦光はずっと懸念していた事を口にする。
この豪雨だ。交通機関は機能しているのか…と。

全員の視線が窓の外に向けられる。
机に突っ伏していた夾でさえ、バッと外に目を向けた。

途端に雷鳴が轟く。


「…確かに…」轟音にもなんの反応も見せない潑春が、いつもの澄ました顔でスマホの操作をし始めた。
運行状況を調べているのだろう。
何かを打ち込んでから画面上を親指が下から上へと滑らせて行く様を、病室にいる全員が固唾を飲んで見守る。


「あ、ダメ。運転見合わせってなってる。動いてない」


マジか…。夾とひまりと紅葉は分かりやすく肩を落とした。
後から聞いた話だが、駅まで向かう路線バスも豪雨の影響で運行休止になっていたそう。

帰る手段が無ければこの場に留まるしかないのだが、ここは病院。
どうしようか。と由希が潑春に相談を始めていると、「ひとつ提案なんだけど」と口を開いた藉真に視線が集中した。


「邦光がこの近くに宿を取ってるから、お前たちもそこで今日は泊まって行ったらどうだい?」

「あぁ、その手がありましたね。確かガラガラだったので部屋取ってもらうように電話入れてきますね」


誰もそこに泊まる事を了承などしていないのに、せっせと病室を出て足早に去っていく。
もうこれは、あれだ。
強制的にこちらに泊まることが決まった。
せめてビジネスホテルなのか、旅館なのか、その辺だけでも詳しく教えて欲しかった。
まぁ、この豪雨の中帰ることも宿を探しにいくことも出来ないので選択肢など無いに等しいのだが。

どうやら病院から徒歩5分の場所にあるようで、夕食付きの旅館らしい。
こちらに泊まると決まれば急ぐ必要は無いのだが、夾は相当身体が辛いらしく先に旅館で寝とく。と病室を出て行った。
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