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ALIVE【果物籠】

第9章 ホダシ


目の前に広がる壮大な景色にひまりは思わず声を漏らす。
"無人駅"という初めての経験にも目をキラキラとさせて彼方此方に目を向けていたが、自然だけが目の前に広がる景色は一味違ったらしい。
その開放感に両手を広げて澄んだ空気を目一杯肺に入れた。

空と地の境目は山。
真昼間なのに道には車も通らなければ、人影すらない。


「うわぁ!!気持ちいいねぇー!!」

「ホント!!空気が美味しいね!!!」


ただ真っ直ぐに伸びる道を走っていくひまりに、同じく両手を広げ、同じように笑いながら紅葉がついて行った。
遮るものがないこの景色の中では二人を見失う心配もない、と保護者的な立ち位置の三人は追いかけるという選択肢を消去する。

駅を出たところで立ち止まった夾が隣にいる人物を半眼で睨みつけた。


「なーんでお前らも一緒に来てんだよ」

「その質問…1時間半前も聞いたけど…」


潑春は悪びれた様子もなく淡々と言葉を発する。

夾は1時間半前にも同じ質問を投げかけていた。
最寄駅にひまりと由希と夾が着いたときには、既に潑春と紅葉が待っていたのだ。
その際に、何となく想像はついたが夾は投げかけた。何故お前らがいるのか、と。
別に隠していた訳ではないが面倒臭さを考えた結果、伝えれば絶対についてくるであろう潑春と紅葉には今日の事は伏せていた。
が、この日帰り旅にテンションが上がっていたひまりが黙っていられるはずがない。

で、最寄駅で彼等を発見し、質問をする。
案の定、帰ってきた言葉は「ひまりから聞いたから」だった。


「ま、大勢の方が楽しいんでしょ。ひまりは」


夾の肩をポンと叩く潑春に長く大きいため息を盛大に吐く。
それに野郎だけの旅にひまりを任せておけない。真顔で言う潑春に、お前らも野郎だろうが。と突っ込みと共に潑春の頭をはたいて疲労のため息を再度吐いた。


「ちょっと見て見てぇぇええ!!道のど真ん中に寝てても誰にも迷惑にならない!最高ォォおお!!!」


田舎の田んぼの間の道にひまりが寝転んで叫んでいる。
その横で紅葉が腹を抱えて爆笑しつつ、彼女と同じように道のど真ん中で大の字を描く。

スマホを片手に無言で写真を連写し始める潑春に、由希と夾は頭を抱えていた。

着いて早々これだったら、この先どうなるのか…と。
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