第9章 ホダシ
「も、もしやそれは、ラブレターというものなのでは」
「あ、違う」
鼻息を荒くさせる透に無の表情で返せば、期待していたものとは違ったとテンションを上げていた3人の肩が落ちる。
「んじゃ何やってたんだ?」
「これ、草摩の子が出してくれた謎解き?みたいなものなんだけど、誰にも見せちゃダメって言われてて…」
覗き込む透達から隠すように紙を半分に折って鞄へとしまった。
「んで?ひまりは帰んねーの?」
今は放課後。
帰路につく生徒達の中、ひまりは荷物も纏めずに謎解きをしていたのだ。
ひまりの前の席にドカッとありさが座り、咲は近くの席から椅子を拝借して腰掛ける。
どうやらありさと咲は放課後の予定が無いらしい。
透は野暮用がありますので…と一礼してから教室を出て行った。
「家でやってても、こう…発想の転換?的なのが出てこなくて、学校ならまた違ったアイデアが浮かぶかなーって思ったんだけど…」
「その様子だと…何も出なかったみたいね…」
頬に指を添えた咲に言われ、ひまりはそうなのー!と机に力無く突っ伏した。
結局、由希に教えて貰った方法でやってみたがでてきた答えは"つなんわま"。
全くもって意味が分からない。
ローマ字の方でも同じく意味不明の言葉が浮かび上がっただけ。
ひまりは既にお手上げ状態だった。
「今日は王子かキョンと帰んねーのかー?」
「由希は生徒会で、夾は掃除当番で中庭の方にいるんじゃないかなー?夾とスーパー行く約束してるから、それまでの間って思ってたんだけ」
「ひまりー」
教室のドアの方から聞こえた声にパッと視線を向ける。
そこには今話題に出た人物ではなく、潑春がひょっこりと顔を覗かせ来い来いと手招きをしている。
ちょっと行ってくるね、とありさと咲に断りを入れて彼の元へ向かうと、今日は珍しく制服の中にパーカーを着ているようでスッポリとフードを頭に被せていた。
「どうしたの?」
「ちょっと…話したい…。時間、ある?」
「うんいいよ。なに?」
首を傾げるひまりに、親指を立てて廊下先を指差し「場所変えたい」と言う潑春。
「キョンが帰ってきたら伝えててやるよー」と行け行けと手を払うありさにひまりは「ごめんね、お願い」と片手を上げて教室を出て行った。