第9章 ホダシ
"たてわれへ"
折り紙の中央にはそう書かれていた。
その文字の下には右向きの矢印が二つ。
「縦割れへ…?んんんー?」
腕を組み、胡座をかいて耳が肩につきそうな程に首を曲げる。
謎解きの類は苦手だ。
前に"ベール"の歌詞のアナグラムの件でも相当頭が痛かった。
シロツメクサを英語にするなんて発想の転換等、由希に助けてもらわなければ到底辿り着けるものではなかった。
その発想の転換が合っていたのかは別として。
それに今回は人の手を借りれそうに無い。
「誰にも見せるな…か」
折り紙の右下に小さく書かれていた。
こんな遠回しな事をせずに、直接話してくれれば良いのに…。
深く長いため息が出た。
ジッと机に置かれた折り紙を眺める。
縦割れ…縦割れ?
半分に破くみたいな?
ってことは縦半分に折ってー…
真ん中でまっすぐに折ってみる。
片側は"たて"と"わ"の半分。
もう片方は"わ"の半分と"れへ"になる。
益々難解になった。
頭を抱えて机に突っ伏す。
"縦割れ"を英語にしてみるとか?
いやいや、燈路はまだ中学生だ。
そんなにややこしい謎解きにするだろうか?
もっと子どものナゾナゾのような…
コンコン
「はいぃっ!」
思わずひまりの声が裏返る。
「俺だけど」の由希の声に、謎解き中の折り紙を布団の中に隠してから「どうぞ」と返事を返した。
「…ごめん、間が悪かった?」
裏返ったような声を聞いて部屋に入ってきた由希は、申し訳なさそうに眉尻を下げていた。
「いやっ!ちょっと考え事してただけだから大丈夫っ」
「考え事?」
由希が机を挟んでひまりの前に座った。
焦ったような仕草をする目の前の彼女に首を傾けて問う。
「ちょっと…歌詞の謎解き考えてて!そう!歌詞のね!謎解きをね!」
いそいそとベールのCDを手に取り、中から歌詞カードを取り出す。
その時点で、勘のいい由希はひまりの誤魔化しに気付いていたが、そのまま話を続けた。
「あれね…俺も考えてみたけどやっぱり解けなくて…」
「だよねっ!私謎解き系苦手で…全然わからないんだよね」
アハハーと愛想笑いで頭を掻くひまりに、由希は穏やかな笑顔だったが何かを含んだようなそれに、ひまりは僅かに背筋を伸ばした。