第2章 おかえり
いや、だから……
なんでパンツがダメでこの至近距離は大丈夫なんだろうか
なんなの?最近の高校生はパーソナルスペース狭めな感じ?
15センチまでなら接近オッケー的な?
いや、私も高校生だけれども。
驚きで喉がつっかえ、言葉が出ない代わりに頭の中では独り言大会が開催されている。
待ってもひまりからの返事はないと悟ったのか、視線を外さないまま更に口を開いた。
「これから一緒に住むなら尚更。ちゃんと教えてくれないと困るんだ。心配させたくないとか、そんな風に思わないで」
由希の言葉を聞いて自嘲したような薄い笑みを浮かべるひまりの表情に困惑する。
心配させたくない……?
違うよ…
「違うよ由希…私はそんなに出来た人間じゃない」
やっぱり乱される。
こんなことを言ってしまうなんて。
そう言う私に由希は驚いたような、困惑したような、複雑な顔をした。
「発作、出たよ。でもホント軽いやつ。熱中症で体がつらくて出ただけで、本当に大丈夫だから。」
「…本当に?」
その問いにゆっくり頷くと、あまり納得はしていないようだったが、これ以上問いただすのを辞めた由希は、近付けていた顔を離しベッドに座り直した。
「あと、もうひとつ聞きたいことがあるんだけど…」
なにを聞かれるんだと身構えていると続けて話し出す。
「5年前…ひまりが言ってたやくそ」
コンコン
ナイスタイミングすぎる訪問者。
由希が言わんとしていることが分かってしまったから、心の中でガッツポーズをした。
「ひまり…入るぞ」
「え?!はとり?!」
想定外の声にひまりが驚くと、由希が「あれ?言ってなかったっけ?」と首を傾げた。
確かにはとりに連絡してくれたんだろうなぁとは思ってたけど、まさか来てくれるとは…
忙しいだろうに、こんな軽い熱中症で呼び出してしまうなんて…
申し訳なさ過ぎる。
こちらの返事を待たずに開かれたドアの前には、苦虫を噛み潰したような顔のはとりが立っていた。
1階で紫呉がふざけて癪に障るようなこと言ったな…と由希とひまりは察した。