第2章 おかえり
はとりが来たことに気を使った由希が、食べたいものがあったら声掛けて。とだけひまりに言うトレーを持って部屋をでた。
階段を降りていく音を確認してからはとりは話始める。
「変身するようなヘマはしなかったらしいな」
「あははー…大丈夫デシタ」
「熱中症だと聞いたが具合は?」
「それが、ほんと軽いやつで。来てもらったのにごめん…」
「……発作は?」
やっぱそれ聞きますよねー。
「まぁ…かるーいのが少し?」
気まずそうに人差し指で頬を掻きながら不自然に笑うひまりにわざとらしくため息を吐いた。
「自分の体調管理ぐらいしっかりしろ。あと、あまりアイツらに心配かけさせるなよ」
軽く説教されズーンと肩を落とすひまりを気に止めることなく、脈をとったり熱を測ったりを淡々とこなす。
「そういえば。紅葉がおかえりパーティーをするって言ってたぞ」
「おかえりパーティー?」
なんじゃそりゃ。と思ったが、よくよく考えてみれば多分、私が帰ってきておかえりーってことだろう。
なんだか仲間に入れてもらえてるようで嬉しくてニヤついてしまう。
それに気がついたはとりがフッと笑うと荷物を片付け始めた。
「早く元気になって、アイツらを安心させてやることだな」
「ねえ、はとり。私のコレって…治らないの?」
鞄を持ち立ち上がったはとりを引き止める。はとりは顔だけをひまりに向け、"コレ"というのが発作であると察し、口を開く。
「…自分の感情に素直になることだな。他人は誤魔化せても、自分を誤魔化し続けるのは無理だと思うが。…まずは無理に笑うことをやめるんだな」
下を向いたままその表情を見せないひまりの頭を軽く撫でると「何かあったらすぐに呼べ」と一言つけて部屋を出た。
「"それ"は…難しいなぁ…」
仰向けに転がると無機質な天井をボーッと見る。
「…おかえり…かぁ」
さっきはとりから聞いた紅葉企画であろう"おかえりパーティー"
また自然と口角が上がってしまう。
戻ってきてから心は乱されてばかりだが、会いに来てくれたり、心配してくれたり…少しずつ"仲間"になれているんじゃないかと勘違いしそうで…。
「由希に言った"約束の話"…してみようかな…」
少しずつ…前に…