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ALIVE【果物籠】

第9章 ホダシ


中途半端に色を染めた紅葉には見覚えがあった。
以前、カレーを一緒に食べた時に折り鶴のお返しにあげたもの。

栞にして持っててくれてるんだ。とひまりがニヤついていると、杞紗を抱き上げた潑春が小首を傾げて戻ってくる。


「…なに?それ?」

「あ…それ…お姉ちゃんから貰ったやつ…」


栞にしたの…。杞紗が恥ずかしそうに呟く姿に胸を撃ち抜かれたひまりが、ヨロリとよろけながら杞紗に拾い上げた小物と共に鞄を渡す。


「大事にしてくれてるんだね。ありがとう杞紗、嬉しい!こっちの真っ赤な紅葉は杞紗が拾ってきたの?」

「ううん。これはね、ひまりお姉ちゃんから貰う少し前にね…燈路ちゃんがくれたの…」


潑春に抱き上げられたままポッと頬を染める杞紗に、またもや心臓を射抜かれる。
紅葉を送るという、可愛らしい杞紗と燈路の恋にまるで心が洗われるようだった。


「あの時期に…真っ赤な紅葉…珍しい」

「ほんとにね!杞紗の為に一生懸命探してくれたんだねーっ」


ひまりの言葉に、杞紗は更に頬を染め上げた。


潑春に抱き上げられている姿も、頬を染める甘酸っぱい雰囲気も全てがひまりをドロドロに溶かしていく。
骨抜きにされ、馬鹿みたいに緩んだ顔をしているひまりに、潑春は「ところで…出掛ける予定あったの?」と問いかける。


「そうそう!今日はとりの所に診察にね!そしたら草摩の家の前でひったくりに会う杞紗に出会って、今に至るって訳!」

「お姉ちゃん…病気…なの?」


眉尻を下げた杞紗に、違う違うと顔を左右に振りながら健康診断みたいなものだよと心配させないように伝えれば、安心したように微笑んだ。
話題を変えようと潑春と杞紗にも同様の質問を投げかける。


「俺は…先生ンとこ…。こないだのこと夾に謝んなきゃな…って」

「私…も…お姉ちゃんに相談が、あって…」


"相談"の言葉に首を傾げれば、シュンとした雰囲気で俯く杞紗に先程から母性本能を擽られまくりのひまりは「どうしたの?」と眉尻を下げた。
杞紗は栞を握りしめたまま重たそうに口を開く。


「少し前からね…燈路ちゃん…何だかおかしくて…何だかツラそうで…。聞いても…何も無いよって話してくれないの…」
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