第2章 おかえり
スーパーの袋を持って居間にいくと、雑談していた3人の視線を一気に浴びる。
由希ラブな潑春がちょこちょこと寄ると「おかえり」と嬉しそうに由希を見ていた。
「由希君おっかえりー。あれ?ひまりは?」
由希を迎えに行って一緒に帰ってくると出て行ったひまりの姿がないことに不思議そうにして紫呉が訪ねる。
「帰ってくる途中で…軽い熱中症みたいになってたから、部屋で休ませてる。…春、申し訳ないんだけどコレの片付けお願いしてもいい?ひまりの様子見に行きたいんだ」
買ってきた食材に視線を向け頼む由希に、二つ返事で引き受けた潑春はすぐに片付けをし始めた。
綾女経由で、はとりに言われた塩水と保冷剤を用意してトレーに乗せていると、不安そうな顔をした紅葉が由希の服を引っ張って振り向かせる。
「ひまり熱中症なの?!大丈夫なの?!ボクもひまりの所に行く!!」
瞳に涙を浮かべて問う紅葉の頭を優しく撫で、安心させるように微笑んだ。
「大丈夫だよ紅葉。はとりも後で来てくれるから。でも今日はもう休ませてあげよう?」
「……久しぶりに…やっと…ひまりに会えたのに」
肩を落として床を見つめる紅葉の頬を優しく包み込んで上を向かせると
「大丈夫だよ。ひまりはもう居なくならないし、ずっとここにいる。いつでも会えるだろ?」
まるで自分にも言い聞かせるように話す由希。
紅葉が感じる不安は痛いほどよく分かる。
5年前、急に居なくなったのはひまりの意思では無い。
だから草摩に戻ったのも、この家に住むことになったのも、彼女が望んだことだったなら…まだ安心出来たのかもしれない。
だが、今回も彼女の意思ではなかった。
「うん……そうだね…わかった…」
まだ拗ねた子どものように口を尖らせてはいるが、我を通す事なく聞き分けた紅葉の頭を再度撫でてやった。
「由希君、もうひとつ気になってたんだけど…」
チラチラと周りを見渡しながら紫呉が首を傾げてる。
「さっき出迎えに行ったあーやの姿も見えないけど…もしかしてひまりと一緒?」
「………。」
紫呉の言葉にサーッと血の気が引いたように顔を真っ青にして、居間を飛び出していった。