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ALIVE【果物籠】

第8章 彼岸花


同居人の由希から承諾を得られ、今度はもうひとりの同居人の許可を得るためにひまりと透が夾へと視線を送る。

まるで子犬が2匹尻尾を振って期待の眼差しを向けているかのような姿に狼狽る夾を、ありさと咲は口に手を当てて笑いを堪えていた。


「ンなもん好きにすりゃーいいだろ」


はなから反対するつもりもなかった夾は食べ終わったお弁当箱を閉めて、ぶっきらぼうに答えた。
その言葉を聞いて顔を見合わせて両手でハイタッチをするひまりと透。


「バイトじゃなきゃ、あたしも行きたかったなー物書きんとこ!」

「私も…行きたかったわ…けど今日は…我が家は焼肉屋さん…」

「お前さっき焼肉弁当食ってたんじゃねーのかよ」

「草摩夾…焼肉を愚弄するとは…いい度胸ね…」

「してねーよ」


口角を不自然に歪めながら咲に突っ込んだ後、夾が透に買い物の有無を聞いた。


「ひまりさん、リクエストをお願いします!」

「えーっと…肉じゃが…食べたい…な」


少し照れながらひまりが答えると、満面の笑みで「お任せ下さい」と了承した。


「では、放課後にお買い物してから向かわせて頂きますね!」

「それなら私も一緒に…」

「俺がついてく」


ひまりに被せるようにそう言ったのは夾。
こういう時に由希が名乗り出るのは予想通りだが、夾が食い気味に名乗り出たことに一同は驚いていた。

特に目を見開いていたのはひまりだった。


「なんだなんだー?キョンは何か変なもんでも食ったかー?」

「…ステーキ重…美味しい…」

「花島、お前は食い過ぎ」

「っるせぇな!!荷物持ち居なきゃ困るだろーが」



ありさに茶化される夾が恥ずかしさを隠すように怒鳴りつける。
その姿を見たひまりは、口を固く結び長い睫毛を下に向けていた。

それに気付いた由希が「じゃあ先に帰ってご飯炊く準備でもしようか」とフォローを入れると、いつもの笑顔で「そうだねー」と答える。

由希は以前までは無理をした笑顔が何となく分かったが、今回確実に無理をしているであろうひまりのその顔がいつもと変わらない物であることに、彼女の感情が読めないでいた。

一瞬見せた傷付いたような表情とは裏腹に、あまりにも自然に笑う彼女に違和感を感じていた。
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