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ALIVE【果物籠】

第8章 彼岸花


月曜日の放課後。

チラホラとクラスメイトが下校していく中、ひまりは席についたままウーンと伸びをした。
今朝の天気予報で夕方から雨だと言っていた通り、厚い雲に覆われ始めている窓の外を眺めている。


「ひまり、帰らないの?」


動こうとしないひまりに声をかけて来たのは由希。
今日は生徒会の活動がないようで、スクールバッグを肩にかけながら彼女の席の前に立つ。


「あ、春に耳消毒してもらうから待ってるの。先帰ってて!」


言ってなかったねごめんーと付け足したが、それを聞いた由希は背負ったばかりの鞄を置いてひまりの前の席に座る。


「じゃあ、俺も待ってようかな。今日は特に予定無いし、あんまりひまりと一緒に帰れないしね」

「俺は雨降る前に先に帰んぞ」


気怠そうに立ち上がってノロノロと歩き始める夾の背中に「傘持ってるのー?!」と声をかければ、振り向くことなく片手を上げて「お」と短い返事だけを残して、彼は教室をあとにした。


「今日、買い物は?」

「行かなくて大丈夫!晩ご飯はカレーだよー」

「…バターチキンカレー…が、いい」

「カレーならヒロとキサが来てもダイジョーブだねっ!!」


急に現れた潑春と紅葉に、「おつかれー」と声をかけたひまりだったが、紅葉が言ったことに…ん?と頭にハテナを浮かべた。


「…燈路と…杞紗…?」

「また紅葉は…勝手に…」


未だに情報を処理できていないひまりに対し、由希は頭を抱えて大きくため息を吐く。


「因みに…俺は今朝その情報知ったから…早くひまりに言わないと発狂するよって…忠告はした」


潑春が話しながら、唖然としているひまりの耳の消毒を始める。
傷口に消毒液が入り込んだ瞬間にツーンとした痛みが彼女を襲い始め、机に突っ伏して拳をダンダンと打ち付けながら痛みの余韻に耐えていた。


「ひまりだったらダイジョーブだよねー?」

「もっと…」


きゅるんっとした笑顔の紅葉の言葉に対し、ひまりはゆっくりと顔をあげながら低い声を出す。


「もっとはよ言えやぁぁああぁあ!?!?!」

「あはは!!ホントだー!ハッキョーしてるーっ!」


ひまりを指差しながらケラケラ笑う紅葉に、潑春は無表情のまま肩を竦めた。
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