第2章 おかえり
よくよく考えてみれば、高校の場所を知らなくて
「あのー…海原高校ってどう行けばいいですか?」
と何度か道行く人に聞きながら進んでいた。
「あっづゔゔー…」
てっぺんに昇った太陽は容赦なく照り付けて体力を削ってくる。
歩くという動作だけで体温が上昇していくのが分かりツライが、まだ目的地ではない。
さっきのお婆ちゃんが言っていたことが正しければそろそろ学校に着くはず…。
それを信じて歩みを進めていると、見知った姿が見えて心底安堵した。
「あれ…?ひまり?」
ひまりは自分と目が合った瞬間にパァッと笑顔になり、おいでおいでと手招きしだした。
その屈託のない笑顔を早く近くで見たくて、急いで彼女のもとに向かった。
「良かったー!会えたー!」
暑さでほんのり赤く染まった頬でこちらを見上げ、嬉しそうに"会えた"なんて言うもんだから心臓が跳ね上がった。
オマケに髪を上げていて雰囲気がガラリと変わってるし、ラフな私服にも好感が持てた。
「どう…したの?」
動揺して言葉に詰まってしまう。
「この辺りを探索がてら、お迎えに来たんだよー!!生徒会お疲れ様っ!」
それにしても暑いねーと手で顔を煽ぎながらまた笑顔を向けられ、口角が自然に上がるのを隠すように、手で口元を覆った。
もしかしなくても…俺…やばい?
「由希どうしたの?気分悪い??」
手で口元を覆ってるものだから気分が悪いのかと勘違いしたらしく、不安そうに見上げていた。
「平気だよ。急な日射しにちょっと、やられただけだから」
口角が上がっていたのを微笑みで誤魔化し、何か別の話題は無いか考えた。
「あ、そうだ。おにぎりありがとう。美味しかったよ。ほんとはお腹空いてたから助かったよ」
お礼を言われると思っていなかったのか、ひまりは照れたように笑うと
「じゃ、じゃあおにぎりのお礼として!由希には今からスーパーに付き合ってもらいマーース!」
と照れを隠しているようだった。
「お礼とかじゃなくても、それくらいならいつでも言ってよ。荷物持ちくらい付き合わせて?」
また嬉しそうに笑って、ありがとうと言う彼女にドキリと心臓が跳ねる。
これはやっぱり、ヤバイやつだ。