第7章 ベール
なぜか目を奪われたその一枚の紅葉をしゃがんで手にとってみた。
「…半端者のまま…落ちちゃったんだね」
「あら…どうしたの?ひとりで…」
中途半端に色を染めた葉を撫でたのと同時に、探し人の声が聞こえてひまりは立ち上がって振り返った。
「あ…えっと…はなちゃん探してたの」
「…そうだったの?わざわざありがとう…お団子…食べたくて…」
咲の片手には1本のお団子、そしてもう片方の手には木舟皿に乗せられた5本ほどのお団子が持たれていた。
そんなに食べるの…?と驚いているひまりに、「1本いかが?」と差し出された木舟皿のお団子を1本手に取ると咲はニッコリと笑った。
そしてひまりの手にある紅葉をジッと見つめ、咀嚼していたお団子を飲み込み口を開く。
「…不思議よね…鮮やかな色に次々と変わっていくんだもの…」
「そうだね…緑、黄色、赤って変わっていくのって紅葉ぐらいじゃない?」
「…どうかしら…?他にもありそうだけど…わからないわ…でも…」
咲の"でも"の言葉にひまりはお団子をひと口食べながら首を傾げた。
「一度…色が染まってしまうと…もう前の色に戻ることは…ないのよね。染まり続けてしまうのね…ほんと、不思議ね…」
「…?そう、だね」
何となく何かを言いたげな咲の言葉に数回瞬きしていた。
「そろそろ透君達のところに戻りましょう」と咲が歩き始めたので、その意味を聞くことはできなかった。
「お前、ドコ行ってたんだよ!?」
「あ、ごめん。はなちゃん探してて…」
由希達のところに戻ると既に夾やありさもその場にいて、ひまりと咲が戻ると夾がひまりに詰め寄った。
眉尻を下げてひまりが謝ると、夾は腕を組んで「ったく…」と何処か気まずそうに視線を逸らす。
「さっきのは…その…何でもねぇから」
「何でもないって??」
頭にハテナを浮かべるひまりに「うるせー!分かんねぇならいい!」とがなる夾に、更にひまりは困惑していた。
それよりも、ひまりは自分自身の中で整理がつかない感情に戸惑っている。
そのままみんなとお土産屋さんへ向かい、目の前に綺麗に陳列されているお菓子をぼんやりとながめていた。