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ALIVE【果物籠】

第7章 ベール


真っ直ぐと天を目指すように伸びる鮮やかな緑の隙間から差し込む木漏れ日。

スーッと鼻腔をくすぐる爽やかな竹の香り。

視覚も嗅覚も、その風情に心を落ち着かせてくれ、そして癒してくれる。


「納豆食べたい平城京…」

「それ言うなら、なんと綺麗な平城京だろ花島。しかもココ京都だからな」

「ねぇねぇ透君!竹の成長スピードの速さを利用した、串刺しの刑ってのがあったの知ってる?」

「そ、それは…とっても痛そうですね…」



そう…聴覚以外は…の話である。

周りでは修学旅行というイベントに浮かれている生徒達が、告白するつもりだとか、意中の彼と手を繋いでココを歩きたい等の高校生らしい会話が繰り広げられているのに、ひまり達と来たらなんの色気もない会話で盛り上がっている。

由希と夾は顔を引きつらせながらそんな彼女達の話を聞いていた。
せめてもう少しマシな内容にならないものか…と。


「にしても、ひまり来れねぇかと思ったけど治って良かったなー!」

「絶対来たかったんだもん!気合いで治した!!」

「昨日の夜まで微熱で体ダリィ言ってただろーが」


夾が呆れた顔で言った言葉に透がギョッとした顔でひまりに向き直ると心配そうに眉尻を下げた。


「だ、大丈夫なのですか!?お体がツライような、すぐに言ってくださいね」

「ダイジョーブダイジョーブ!ありがとう透君!もう熱下がってるし!」

「でもホントに、病み上がりなんだから無理は禁物だよひまり」


その横から顔を覗かせる由希に「はーい」と分かっているのか分かっていないのか…適当に返事をしてまたワイワイと話し出すひまりに大きくため息を吐いた。


竹林を抜けると、今度は僅かに色づきはじめた紅葉が顔を出す。
竹でできた塀や石垣など、こちらもまた風情ある街並みにひまり達は目をキラキラとさせていた。

そんな街並みを手を繋いで歩くカップルの生徒に、クラスの男子2人が羨ましそうに目を向けている。


「あれって修学旅行カップル第一号じゃね?」

「ええのぅーええのぅー俺も告白されたいなー」


しょんぼりする彼等に咲が「どうでもいいわ…そんなこと…」とピシャリと言い放った言葉に、更にショックを受けて打ちひしがれているのを、ひまりと由希と透は困ったように笑いながら見ていた。
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