第2章 おかえり
朝からの数時間で、何日も寝ず飲まず食わずだった人のようにやつれた顔をした夾が、大きなため息を吐いて食べ終わった食器を流しまで持っていくと、そのまま廊下の方へ出ていこうとする。
「夾くん朝からお出掛けかーい?」
夾に絡むのに飽きたのか、綾女は紫呉に一方的に何かを話し続けている。
うんうん。と話を聞きながら、食事を終えてお茶を飲んでいた紫呉が視線を向けることなく夾に声を掛けた。
「ちげーよ!もう付き合ってらんねー。寝る!!!!」
こちらも振り向くこともせずドカドカと出て行った…が、足音が止まり、また居間へと戻ってきた。
「テメェらひまりにちょっかい出すなよ!!」
顔だけを出して、怒鳴りつけると大きめの足音で階段を登って行った。
その様子を見ていた紅葉は笑顔で、潑春は口角を上げて優しい目をしていた。
「ホント、キョーってば"分かりやすい"よねー!」
「うん、ほんとに」
笑う2人をひまりが頭にハテナを浮かべて見ていると、それに気付いた紅葉が優しい顔でニッコリ笑った。
「うーんとね……キョーはね、ひまりにもう居なくなってほしくないんだよ!」
ちょっかい出すなから、何故居なくならないで…になるのか…
説明が簡潔すぎてよく分からないが、これ以上問いただそうとは思わなかった。
私も朝からの騒がしさに少し疲れてしまっているのかもしれない。
「時にぐれさん!本日は何かラブロマンスが起こりそうな予定等はあるのかい?」
多分、今日出掛ける予定はあるのかっていうことだろう。
綾女のその問いにひまりがハッとする。
紅葉達が次々と来て忘れていたが、少し出掛けようと思っていたことを思い出した。
「そうだ。私ちょっと出掛けてきてもいいかな?この辺りのことも知っておきたいし…」
食器を流しに持って行きながら言うひまりに不服そうな顔をしたのは紅葉だった。
「えー!ひまりお出かけするの?せっかくひまりに会いに来たのに……ボクも一緒に行きたい!!!」
子どものように駄々をこねる紅葉にひまりは困ったように笑った。