第2章 おかえり
突如現れた、本日2人目の"タチの悪いヤツ"に夾は、まだ朝だというのに疲労困憊で項垂れ、頭を抱えていた。
ひまりはポカンとした顔で
「久しぶり綾女…相変わらずだね」
と言いつつ、ゆっくりと綾女から離れようとするが、両手を握られ向かい合わせにされ、冷や汗が流れる。
ひまりにとって、十二支の中である意味1番危険な人物。
行動が読めなさすぎて、いつ抱きつかれるかと冷や冷やする。
「"綾女兄さん"と呼んでくれて構わないのだよ?ボクにとっては妹同然…いや!ひまりは妹なのだよ!これは誰にも変えられない事実なのさ!!」
紫呉が「妹ではないことが事実だよあーやー」と優しく突っ込みを入れる。
なんっっかムカつく。
なんかわかんねーけど腹立つ。
夾はひまりと綾女のやりとりに苛立ちを覚え、2人を勢いよく引き剥がす。
「わぁっ」と言って体勢を崩すひまりの背中を片手で支えてやり、「離れろ」と綾女を牽制した。
「なんだいなんだいキョン吉!嫉妬心という奴だね!ジェラシーだね!ジェラジェラだね!!」
綾女の言葉に顔を赤くして「し、嫉妬じゃねぇ!」と言い返すが、宥めるように肩にポンと手を置かれる。
「恥じることはないよキョン吉くん。誰しも嫉妬心に苛まれるものなのさ!特に思春期男子にはよく見られる傾向だね!だがしかし!申し訳ないがひまりを妹にすることは出来ても、キョン吉くんを弟にする事はできないんだ…すまないね…」
「なんでその結論になった。ヘンタイ野郎」
切なげな顔の綾女に諭されるように言われ、先程耳まで赤くしていたその色をスッと落ち着かせると、"嫉妬"を勘違いしているヘンタイ野郎に夾は冷めた目を向けていた。
「そうだ!まさに閃いたよキョン吉!このボクと真実の兄弟になることは出来ないが、ひまりとボクと3人で愛しあえば兄弟に」
「下衆いわクソ変態!!!」
綾女がひまりにキスをしようと顎をクイッと持ち上げた所で、怒り心頭の夾に頭を殴られ阻止された。
すると我関せずと食事を続けていた潑春が
「さすがに…今のはダメ。殴られる」
なんて言うものだから「お前が言うな!」とツッコミを入れた所でガクッと夾は力無く項垂れた。