第7章 ベール
不変を受け入れることが死なら
どうやって生きればいいのか教えてほしい。
絶対に良い方向に変わる保証なんて無いのに
何を糧に頑張ればいいの。
信じていれば報われる?
それって綺麗事なんじゃ無いかって思う。
未来が見えたらいいのに。
その答えが見えるのなら、何の迷いもなく頑張れるのに。
何の迷いも欲もなく諦められるのに。
限られた時間を無駄にしなくてもいいのに。
「ゔー……」
意識が覚醒して目蓋を開けるよりも先に体のダルさに思わず声が出た。
いや、あまりの体の怠さに目が覚めたのか。
眠る前よりも頭痛も怠さも大分マシにはなっているが、それでもまだツラかった。
唾を飲み込むのもやっとな程の喉の渇きを覚え、ゆっくりとベッドから体を起こす。
ローテーブルに置かれた薬とコップ一杯の水。
迷わずコップを手に取り一気に飲み干したが満足できる量ではなかった。
水を求めてベッドからゆっくりと立ち上がる。
立ち上がってから初めて自覚した目眩感。
「ゔー…」とまた自然と漏れる声と同時に頭に手を置いて一度目を閉じる。
水を飲みに行くか、それともベッドに横になるか。
突如突きつけられた選択に目を閉じたまま悩む。
水飲みたい。体しんどい。水飲みたい。体しんどい。水飲みたい。
何度か心の中で繰り返し呟いた。
自身が優先的に欲しているのはどっちだろう、と。
「…み"…ず…」
結果勝利したのは水。
考えてみれば晩ご飯どうするのかとか何も伝えていない…と壁に手を置き、体を支えながら向かうのはキッチン。
いつもより時間を掛けて降りた階段から伸びる廊下を見る。
毎日スタスタと歩いていたキッチンまでの道のりがこんなにも長いと思わなかった…と深いため息を吐いた所で「おやー?」と紫呉がひょっこりと顔を出した。
「音がしてたからまさかとは思ったけど、起きてきちゃだめじゃないひまり。お腹でも空いた?」
ふらふらと歩くひまりは首を振って、「水飲みたくて…」と絞り出した声で伝えながらゆっくりと歩みを進めようとしたが、壁に手をついた紫呉に道を阻まれその足を止める。
「すぐに部屋に戻りましょう。水持っていくから…ね?」