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ALIVE【果物籠】

第7章 ベール



——— お前、卒業したらどうすんの?

——— え!あ、ごめん。考えごとしてて…



——— 時間は…時間は有限なんだよ。

——— 私は1日でも無駄にしたくないっていうか…



ずっと抱えてたのか?
俺と同じように、幽閉される未来を…お前は。

笑ってるその笑顔の裏で…



「きょーうー?」

「…何か用か?」


ノックされたドアを開けるとひまりの姿。
濡れた髪と肩にかけられたタオルでお風呂上がりだということが分かる。

夾は彼女の頬が僅かに赤みを帯びているように見えて僅かに目を細めた。


「帰り遅かったねー。夕ご飯、ラップして置いてたけど食べた?」

「あー。悪かったな。食ったよ飯」

「良かった良かった。それでね、今度修学旅行あるでしょ?予備でボストンバッグ持ってないかなーと思って」

「あー。あったかも。探すからこっちで座っとけ」


ひまりを部屋へ招き入れてドアを閉めると、押し入れを開けて中を探り始めた。
部屋の中でちょこんと座るひまりに背を向けたまま夾が疑問を投げかける。


「…お前、その頬どーしたんだよ」

「あ、これ?先輩とタイマンした時のやつ」

「………はぁ!?!?」


少しの間を置いて反射的に押し入れの扉を勢い良く閉めて体ごとひまりの方に向く。


「…転入早々なにしてんだよ。…もしかして昼間の」

「由希に散々怒られましたー。反省はしてないでーす」


夾の言葉を遮ると、口を尖らせてツーンと顔を逸らすひまりに「オイ…」と呆れたように顔を歪ませる。


「お互い譲れない物があった。だからぶつかって喧嘩した。以上!この話終わり!」

「…お前さー…」


ひまりの前に夾はゆっくりと腰を下ろした。
怒られると思っているのか、目の前の彼女は身構えながら口をギュッと結んでいる。

夾は真剣な眼差しでひまりの目を射るように見つめた。


「…俺に何か言うことねぇの?」


全て又聞きだった。
物の怪憑きのことも、幽閉のことも。

ひまりの口からはなにひとつ聞けていない。
別荘の時のことも、由希達に言ったようにすぐに話してくれるものだと勝手に思っていたのに。
そんな素振りを見せないひまりにモヤモヤとした感情が蠢く。
幽閉の事実を知らされて余裕が無かったのかも知れない。
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