第7章 ベール
「いや、だから草摩のお金は私の物って訳じゃないのでお渡しできる物は何も…」
「別にアンタから金取ろうなんて微塵も思ってないんだけど」
「へ?」
ひまりは気の抜けたような声を出して目を丸くしながら首を傾げた。
カツアゲじゃないのなら呼び出された理由が思いつかなかった。
そんなひまりに更なる苛立ちを眉に現した女子生徒の1人が声を荒げる。
「とぼけんじゃないわよ!由希のことで話があって呼び出したんだよ!!アンタ由希との距離が近過ぎるんじゃない!?」
怒り心頭の彼女の言葉に、転入した日に言っていたありさの言葉を思い出し、まるで解決の糸口を見つけた!と言わんばかりにひまりは表情を明るくさせた。
「あ!私、草摩の人間なんです!」
「はぁ!?それさっきも聞いたし、そんなことこっちはとっくに知ってんだけど?」
「……ほぉ??」
ならば何故お怒りのままなのか…。
困ったようにまた首を傾げたひまりに1人の女が乱暴にひまりの胸ぐらを掴み上げた。
そしてギリッと奥歯を噛み締めた女達はその表情を怒りに満ちたものにしたまま次々と荒げた声を浴びせ始める。
「当たり前みたいに由希の近くにいるアンタが目障りだっつってんの!見てて鬱陶しいんだけど!」
「馬鹿みたいな面して草摩の人間だか何だか知らないけど、当たり前みたいに由希の隣にいて調子乗ってんじゃないわよ!?」
「やっと本田透が大人しくなったかと思えば次はアンタ!?これ以上由希の近くにいるようだったら痛い目見させるから覚悟しててよ?由希はみんなの物なんだから二度と近寄らないで!」
その言葉に下を向いたまま動かないひまりに、彼女達は満足そうに視線を交わし合うと掴んでいた胸ぐらを解放する。
「平穏な学校生活にしたいなら大人しくしててね?」と捨て台詞を吐き立ち去ろうとした。
だが思いもよらない事態に3人の体が硬直したように歩み始めた足を止める。
ダンッッ!!!!
「ひっ!!」
大きな音に怯えたような声をだしたのは先ほどまでひまりの胸ぐらを掴んでいた威勢が良かった女。
他の2人も顔を引きつらせて大きな音がなった場所を怯えたような目で見ていた。