第7章 ベール
透が頭にハテナを浮かべて首を傾げている横で、顔を赤くさせて怒る夾相手に下ネタでいじり倒すひまりとありさは腹を抱えてゲラゲラと笑っている。
「はぁー…ったく…」
その様子を見ていた由希が、お弁当を食べ終えてから深いため息を吐いて箸を置くと、ひまりの頬を片手で挟んで振り向かせる。
「ひまり、女の子なんだからちょっとは慎みなよ」
「下ネタは高校生の潤い案件だと思いまーす」
頬を挟まれた事によって尖った唇を更に尖らせて反論するひまりに、微笑みで返す由希の額には薄く青筋が浮かび上がっている。
由希の静かな怒りと同時に何処からともなく聞こえてきた数人の女子の悲鳴にひまりは肩をビクッと震わせる。
前にも聞いた場違いな悲鳴。
由希とひまりは驚いたように周りを見回すが、何処にも見当たらない声の主に首を傾げた。
「アイツらも暇なんだなーずっと監視してんのかよ」
ありさが校舎の2階の窓を見上げて言うと、その他のメンバーもそちらに目を向ける。
が、そこにはもう人影は無かった。
「由希君の…ファンの方達でしょうか?」
「ええそうね…ずっと負の電波を感じていたわ…」
「お前、電波で分かってたんなら言えよ」
「そんな事も分かるの!?はなちゃん凄い!」
呆れた顔の夾と違ってひまりは咲の能力に目をキラキラ輝かせていた。
そんなひまりを見てありさはケラケラッと笑い出す。
「にしても、ひまり結構肝が据わってんのなー。普通転校早々目付けられてたらビビんだろー」
「…へ?」
ありさの言葉に目を点にして固まるひまり。
夾が親指でひまりを指すと「コイツ気付いてねーよ」と言う言葉にありさ達も「は?」と固まる。
「ちょっと待って。私が目付けられてるの?」
「他に誰がいんだよ。どう考えてもお前だろーが」
「ええええぇぇぇえ!?」
驚きの声をあげ、嘘でしょ…と口を覆って落胆するひまりにありさが堰を切ったように大笑いをし始める。
「ひまりって…意外と鈍いのね…」
「だ、大丈夫ですよひまりさん!私達がいますし…っ!」
「転校早々目付けられるとか某ヤンキー漫画の主人公じゃん…無理ゲーじゃん…」