第7章 ベール
「では!ひまりさんも私達と同じグループなのですねっ!」
爽やかな風が通る中庭に大きく響いたのは、嬉々とした透の声。
お昼休みにお弁当を食べながら過ごしていたひまり達は、修学旅行の話で盛り上がっていた。
「うん!急に割り込む形にはなっちゃったけどよろしくね?」
「いいーっていいーって!逆にひまりがあたしらンとこ来てくれりゃ面白いもん見れそうだしなー!なぁ?花島?」
「そうね…楽しませてくれそうね…」
ニヤニヤと悪い顔をしたありさと咲が、お弁当にがっつく夾に視線を送ると「あぁ!?」とそれに気付いた夾が不機嫌そうに眉をしかめる。
「なんだよお前等、こっち見てニヤニヤしてんじゃねーよ薄気味悪ィ」
「あら…薄気味悪いって…貴方が醸し出している桃色電波の事かしら…?」
「ぶふっっ」
頬に手を当て首を傾げながら問いかけてきた咲の言葉に、夾は口に入れていたオニギリの米粒を飛ばしながら吹き出す。
「きょ、夾君大丈夫ですかっ??」
「夾汚い」
「…下衆」
焦って心配する透と違ってひまりと由希はその理由は違うものの、夾に呆れたような目を向けていた。
その反応にさらにニヤつくありさを睨みつけた後、咲に「電波で俺の心を読むんじゃねぇ!!」と肯定とも取れる言葉で怒鳴りつける。
「はなちゃんそんな特技持ってるの?」
「…電波で人の心は読めないわ…」
その言葉に「なんだ」とホッと胸を撫で下ろす夾を横目でチラリと見た咲は僅かに口角を上げ「…ということにしておいてあげる」と呟く。
すると目を見開いて分かりやすく夾は焦り始めた。
「読んだのか!?やっぱ読んだのか!?」
「さぁ?ご想像にお任せするわ…」
咲に遊ばれているとも気付かない夾は絶望したかのように肩を落とし、それを見ていた透は苦笑している。
「桃色電波って、夾エロいことばっか考えてんの?」
「ばっ!ちっげぇーよ!!」
「しゃぁねーってひまり。コイツ童て」
「ヤンキーその口閉じろや!!」
「別に恥ずかしがる事ないじゃん。私だって処じ」
「ひまりお前も!!もうちょっと恥じらいってもんを持てよ!?」
透以外の女メンバーに遊ばれていると未だに気付かない夾は、いとも簡単にその"お遊び"に乗せられていた。