第6章 執着
「「僕の心に芽吹いたシロツメクサに身をゆーだねてーっ」」
繋いだ手をリズムに合わせて揺らしながら歌うひまりと紅葉に、コーラやお菓子の入ったレジ袋を持った由希がクスッと笑いながら「何の曲?」と尋ねる。
「えーユキ知らないのー?最近テレビで流れてるんだよ」
「うーん、俺は聞いたことないな」
「確かCMだったよね?何か耳に残るんだよねこの歌」
「わかる!ボクもずっと頭の中で流れるんだー!特に最後のとこ!」
わかるわかる!と笑うひまりと紅葉は顔を見合わせ、小さく「せーの」と呼吸を合わせると
「「きみーがー好きー」」
と声を揃えて最後のフレーズを歌い、またふふっと2人で笑い合い繋いだ手を振り始める。
微笑ましい2人のやりとりに由希はひまりの空いてる手を取って「俺もまぜて?」と微笑むと彼女は笑顔で頷いた。
「「僕の心に芽吹いたシロツメクサに身をゆーだねてーっ」」
灯のない薄暗い道をひまりと紅葉の歌う声が響く。
一瞬だけ「ミィ!!」と突然鳴いたセミに驚きの声を出してしまったひまりにまた3人で声を上げて笑った。
「ただいまー!あ!もうピザきてたんだっ」
買い出しを終えた3人が部屋へ入ると、その中は香ばしい匂いでいっぱいになっていた。
テレビを見ていた夾と潑春が振り向いて「おかえり」と声をかけながら準備の為に立ち上がる。
何となく夾と潑春の雰囲気に違和感を感じたひまりだったが
「おい春!ナゲットまだ食うんじゃねェよ!」
「大丈夫…ただの味見」
気のせいか。とコップやお皿の準備にとりかかった。
机に並べられた3枚のピザに「ピザキャップ特集でやってたやつだー!」とひまりが目を輝かせ始める。
いただきますと手を合わせ、それぞれがお目当てのものに手を伸ばし始め、念願のピザパーティーが始まった。
周りに住宅がないこの家ではどれだけ騒いでも咎める存在は誰もいない。
食事の後は、このメンバー恒例のババ抜き大会が始まり、やはり夾の1人負けだったことは言うまでもない。
紫呉が帰宅したのは日付が変わる手前だった。
居間に入るとトランプを片手に机に突っ伏していたり床で大の字になっていたりの雑魚寝状態で眠っているのを見て、家の主はしょうがないなぁ。とクスッと笑っていた。