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ALIVE【果物籠】

第2章 おかえり




木陰を歩いていても、今日もやっぱり暑い。
蝉の鳴き声が耳障りで不快だが、家を出る時に渡された自分には似合わない可愛らしいそれを思い出して、口元が緩む。



「あーー!ユキだあ!!」

「ホントだ……由希がいる……」

目の前に現れたのは金髪で見た目は小学生にしか見えないテンション高めな紅葉と、白髪で根元が黒の物静かな潑春だった。


「もう夏休みだけど…制服……天然?」

天然と言い首を傾げて尋ねてくる潑春に「生徒会だよ!!」と強めに言い返してから今度は由希が疑問を投げかける。


「紅葉と春もどうしたの?……もしかしてひまり??」


この道を進めば紫呉の家に辿り着く。
2人が急に紫呉の家を訪ねてくる理由で、思い当たることはひとつしかなかった。


「そうなの!!ひまりが帰ってきたって聞いたからね、一緒に会いにきたのー!ひまりったらなーんにも言わずにいなくなったでしょ?心配してたんだよって怒ってやるんだ!!」


全然怒っていない雰囲気でエイエイオーとでも言いそうなポーズをして紅葉はニコニコしている。


「ひまり…先生の家で一緒に住むことになったんでしょ?…色々あったみたいだし、大丈夫かなって心配だったから」


「でももしかしたら今、朝ご飯食べてるかも…。ひまりが今日から作るって頑張ってくれてたから」


その言葉を聞いて紅葉の目がキラキラ輝きだす。


「ホント?!ひまりの手料理食べれるのー?!ひまりが出掛けないように早めに来て正解だったね!ボク食べずに来ちゃったからお腹ペコペコなんだー!」


嬉しそうに家までの道を走って行った。


朝早く来た理由はそれだったのか…。


小さくなるその背中を見ていると潑春に肩にポンと手を置かれた。



「なんか…落ち込んでた?」




春は鋭い。





「……ちょっと…自分のガキさに…腹立ててただけ」




自嘲気味に笑う由希の肩を再度2、3度ポンポンとした。



「思春期…ってやつ?」

「年下のクセになんでそんなにジジ臭いんだよっ」


呆れたように言うが、吹き出してしまう。

そんな由希を見て微笑むと「また後で」と手を挙げて目的地へ向かった。


「ほんと…春は人の心配ばっかだな…」


呟いて彼らとは反対方向へ歩いていった。



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