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ALIVE【果物籠】

第2章 おかえり




「あ!おはよう!由希!今日も学校行くんだよね?朝ごはん作るから!紫呉も夾もちょっと待ってて!」


言い合いの途中で掌を拳でポンと叩いたひまりは、先に顔を洗ってくる!と洗面所に向かった。


最近また眠りっぱなしだった炊飯器が稼働していたのはそういう理由だったのか。
久しぶりにお米が炊けた知らせをするその音が部屋に響く。



あいつ飯なんか作れんのか?と呟いて大きな欠伸をしている夾を、由希は気付かぬ内に睨みつけてしまっていた。


その視線に気付き「…なんだよ」と殺気を帯びた目で睨み返す。



一触即発な雰囲気を壊したのは、意外にも原因を作った本人だった。


「……別に。」



夾は怪訝な顔をしたが、それを無視した。



やっぱりガキだ。反吐が出る。


夾の顔を見ないようにして苛立ちを抑えるので精一杯だった。



そこに戻ってきたひまりがキッチンで手際良く準備をし始める。

「ごめんひまり、今日早く学校に行かなきゃならないからあと15分くらいで出るんだ。…残ってたらお昼に食べさせてもらってもいい?」


作業しているひまりの後ろから申し訳なさそうに由希は言うと時計を指差す。


「えぇ!そうだったの?こっちこそごめんね!早く起きてればご飯間に合ってたのに…」


「気にしないで。お昼ご飯楽しみにしてるね。早く帰ってくるよ」


眉尻を下げたひまりに優しく微笑みかけ、頭にポンと手を乗せて居間を出て行った。






……嘘を、ついた



本当はいつも通りに出れば充分間に合う。


苛立ちを抑えきれない自分に気付かれたくなくて。


ガキみたいな自分が恥ずかしくて。












準備を終わらせて玄関で靴を履いていると名前を呼ばれた。

「由希ー!」

玄関まで足早で来た彼女の手には花柄の小さな巾着が持たれていて、それを差し出した。


「おにぎり!何も食べないよりマシかなーって思って!包むもの何もなくて私が使ってたやつなんだけど……やっぱ嫌?」


申し訳なさそうにこちらを見上げる彼女を可愛いと思った。
馬鹿にしている訳じゃないが、思わず笑ってしまう。


「ふふっ…ううん。嬉しいよ。ありがとう。じゃあこれ貰っていくね?」

由希は微笑んで受け取り、行ってきます。と手を振って家を出て行った。

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