第6章 執着
「学園防衛隊ソウマンジャーとかよくね?」
「なんかそれ…ウケ狙いのパロディAVの題名みたい…」
ポケットに手を入れたままシラーッとした顔で下ネタを言ってのける潑春に由希は思わず近くの壁に頭をぶつけていた。
ひまりと紅葉はキョトンとしていたが、翔は腹を抱えて笑い出す。
するとひまりが、あ!と何かを閃いたようで、それに嫌な予感しかしなかった由希は彼女の背後にスタンバイしていた。
いつでもその口を塞げるように。
「ソウはそうにゅ…ぶっっ」
「ひまり〜〜ッ!!」
背後から両手で口を押さえられ最後まで言うことは出来なかったが、ひまりが言おうとしていた単語が分かっているようで翔は更にゲラゲラと笑い出し、潑春は「ひまりもう一回、ハッキリ言って」と単語を言わそうとする始末。
「マンはま…」
「言わすな!!言うな!!」
「ひまりめっちゃおもしれーじゃん!だーっはっはっは!」
目尻に涙を溜めながら、机をバンバンと叩き笑い続ける翔。
口を塞ぐ由希の手を両手で掴んで下ろし、悪戯が成功した子どものように笑うひまり。
この悪ノリの言い出しっぺの潑春は、いつもの気の抜けたような表情のままボーっとしている。
由希にとっては、何の事だかサッパリでキョトンとしている紅葉の無垢さが唯一の救いだった。
…救いの筈だった。
「パロディ系は名前負けが多いよー。それよりひまり!足もうダイジョーブ?痛くない?」
待て。今すげぇサラリと衝撃発言しなかったか?
ひまりは特に気にすることもなく「平気だよ」と普通に会話をしているが、明らかに引っかかる発言をしていた。
由希が凍りついていると、潑春が「カマトトぶっててほしいよね。紅葉には」と首を掻きながら欠伸をしだす。
その様子にどうやら潑春にとってはそこまでの衝撃はなかったようだ。
潑春は未だに笑い転げる翔を避けて通ると、手を繋いでまた学校探索へ繰り出そうとしているひまりと紅葉の元へと向かう。
「由希ありがとう!生徒会頑張ってね!また戻ってくるから先に帰らないでよ!」
笑顔で手を振るひまりに力無く笑い掛けると3人の背を見送ってから椅子に座って項垂れた。
何だかドッと疲れた…。
由希の大きな溜息は翔の笑い声にかき消された。