第6章 執着
「ゆんゆーん!ひまり見つけたオレを褒めてー!」
ひまりの手を離して由希の元へと駆け寄る翔に、由希は殺気を帯びた目で詰め寄り始める。
「ゆんゆんは辞めろ。どうしてひまりと一緒にいて、どうしてひまりが怪我してるのか無駄口叩かずに簡潔に答えろ"そこの人"」
「なんだよー何ゆんゆんプリプリしちゃってんだよー生理ー?」
翔の言葉に由希の怒りは沸点に達したようで、翔の脇腹に一発拳を入れると何事も無かったかのようにひまりの元へと歩み寄った。
「いってぇなぁ〜ゆんゆんのパンチつっえぇなぁ〜」
「待って、あの人大丈夫?」
「放っておいて大丈夫だよ。加減はしてるから。それにしても足どうしたのひまり?」
あははは。と乾いた笑いをしながら倒れている翔を多少心配したひまりだったが、2人のやり取りを見ていると日常茶飯事の事なんだろうと思い気にしないことにした。
そして由希の問いかけに、翔を起こした理由を思い出し彼の元へと駆け寄る。
「そう!翔を踏んじゃってバランス崩してコケちゃったんだよね。ごめんね、足大丈夫?」
廊下の床で伸びている彼の横にしゃがみ声をかけると、翔は「え!?」と飛び起きてひまりに顔を近付ける。
「敵じゃなかったん!?えー。まじかー敵じゃなかったんかぁー」
「近い。お前またどっかその辺で寝てたんだろ」
由希はひまりに顔を近付けてる翔の額を押して離れさせると、腕を組んで呆れたように彼を見下ろした。
「あ、花壇の近くにあった肥料の袋で寝てたよ」
「あー!ひまりチクんなって!ゆんゆんの怒りを買うじゃんかよー!!」
「既に怒ってる」
更に呆れの色を濃くする由希に、ひまりはアハハと眉尻を下げて笑い始めた。
綾女属性の彼と仲が良いとは、にわかには信じ難かったが2人のやり取りを見ているといいコンビなんだと思う。
そんなひまりに釣られて翔がヒヒッと笑いながら立ち上がると、由希の肩を抱いて彼女から少し離れると由希に耳打ちをし始めた。
「ねぇねぇ、もしかしなくてもゆんゆんってひまりにホレてる感じ?」
ニヤニヤしている翔を横目に、由希は厄介な奴にバレた…と嫌そうな顔でため息を吐いた。