第6章 執着
「なになに?俺のこと知ってくれちゃってるの?そうそう!ゆんゆんと同じ学園防衛隊所属で俺はブラックね!もうコレ決定事項なの。何がどうなってもオレはブラックってことでよろしく!因みにゆんゆんはレッドなんだけど」
「…は?」
「いやぁ、ブラックの名が世に行き届いてるとは嬉しいねぇ。なぁんか学園防衛隊頑張ってきた甲斐があったなぁ。まぁまだ引き継ぎ段階だけどなー!はははは!ってちっげーじゃん!ひまり怪我してんだろ?保健室開いてっかなー知んねーなー開いてるかもなー。よっしゃとりあえず本部に戻ろうぜぇー」
他人の事など全くお構いなさ気な上に、こちらの返答を聞こうともせずに手を引っ張るこの強引さ…。
手を引かれながらひまりはまたハッとする。
これは綾女属性だ…と。
「そんでさぁ、そこでオレ言ったんよ。やっぱブラックってメンバーのピンチにザッとクールにカッコ良く現れっからオレしかいないだろーって。登場シーンは口に葉っぱ咥えて、背景は夕陽ね!これ必須ね!」
果たして今、何を聞かされているのだろうか。
ひまりは綾女属性の翔の話を右から左に聞き流して、大人しく手を引かれながらついて行った。
地味に痛い両膝の傷を気遣ってか、ゆっくりと歩く翔は優しい心の持ち主なのだろう、とは思う。
だが、しかし。
「ブラックってシックで大人な感じで一匹狼ってイメージじゃんか?薄情な奴って思われがちだけど、実は1番仲間想いだったりするわけよ」
果たして何を聞かされているのだろうか。
綾女に対しても思うが、こちらが聞いていないことを気にすることもなく話し続けるハートの強さはある意味尊敬に値する。
「敵の中でもさー結構暗い過去抱えてたりするヤツがいて……あ!!」
翔は話を中断させたかと思ったら急に立ち止まった。
ひまりは翔にぶつからないように、反射的に体を硬直させると翔が立ち止まった理由へと目を向ける。
「翔、お前今までどこに…それより何でひまりといるんだ?」
翔と手を繋ぐひまりを見るや否や不機嫌そうに目を細める由希を見つけ、ひまりは救世主が降臨したとでも言わんばかりに表情を明るくさせていた。