第6章 執着
「ぐれ兄、どういうこと?どうしてあの子…まだ呪われたままなの?」
「そもそも解けてなかったっていう風には考えないの?」
「教えて…あの子のこと…連れ戻した、理由」
「前から思ってたけど君の執着は凄いねぇ?例えばそれを僕が知ってたとして…僕に何か見返りでもあるの?リンちゃん?」
「あげる…何でも。アタシの体でも…心でも」
紫呉の書斎で腰掛けている彼の太腿に手を乗せると擦り寄るように近付く依鈴。
それを馬鹿にしたように口角を上げて見つめる紫呉。
2人のやりとりが起こる数時間前…
「ねぇ、前も思ったけど急すぎるよね?紅葉は」
「だって悪いハナシじゃないでしょー?ハルもそう思うよね?!」
「まぁ…由希に会えるし」
昼食を取り終えて【ゴゴナンデス】を見ながら晩ご飯の献立を考えていると、潑春と紅葉が突然やってきた。
その姿は私服ではなく制服を着用しており、ひまりが困惑していると「ガッコーに行くよー!」と紅葉が言い出したのがことの始まり。
明後日から始まる学校の為に用意していた制服に着替えろと言われ、一足先に着た制服はまだ馴染みがなく固く感じるそれを身に纏うと3人で海原高校へと向かっていた。
夾は道場でいないが、由希は生徒会で朝から学校に居ることを理由に学校見学へ行こうという紅葉の提案で。
「そもそも、休みの日に用事も無いのに学校って行ってもいいものなの?」
「別にいいんじゃない…転校先の、学校見学なんだし…。俺らはその案内人」
「そーそー!ひまりも全然知らないより安心でしょ!センセーに怒られたらセートカイチョーのユキのせいにしちゃおー!」
あははは!と笑う紅葉にいつもこんな調子で由希が苦労してるんだろうなぁ…と容易く想像出来て苦笑した。
先程の潑春の口振りから、生徒会で忙しいであろう由希の元へといくことは確定してそうなのでひまりは心の中で由希に謝っておいた。
ハァと軽くため息を吐くひまりに気付いた潑春が隣で歩く彼女の顔を覗き込む。
「…大丈夫。由希のことも愛してるけど、ひまりのことも愛してる…」
「まて。急に何の話」
「将来は3人で暮らそう」
「だから何の話」
真剣な顔の潑春にひまりは怪訝な顔をしていたが、紅葉はそのやりとりをケラケラと笑いながら見ていた。