• テキストサイズ

ALIVE【果物籠】

第5章 それぞれの




ニンマリと勝ち誇った顔で見下す夾に、持っていた水鉄砲で仕返しをしようとするが、タンクの中は既に空になっていて空撃ちを数回繰り返しただけだった。


「あはは!卑怯だよ夾ー!助けてあげようと思ったのにー」

「お前にそっくりそのまま返すわ。その言葉」


笑いが治らないひまりに、夾は腕を組んだまま呆れたように肩を竦めて「お互いアウトだろコレ」と、Tシャツの裾を絞り始めた。


「ビチョビチョになっちゃったねー。よーし太陽の力を借りて乾かすぞー!乾いたらやり直そ」


ひまりも同じように裾を捻って絞ってから、空になった水鉄砲に川の水を入れ始めた。
「まだやんのかよ」と言う夾を無視して、夾の分も補給してあげると手を伸ばして水鉄砲を渡すように促した。

文句を言いつつも彼女にそれを渡す夾は、結局はひまりの意見に反対ではないようだった。

水鉄砲のタンクを川に沈め、コポコポと出る泡を見つめながらひまりはニヤニヤと笑っていた。
自分の分と夾の分。両方のタンクを満タンにして装着すると両手でそれぞれ水鉄砲を持ち、「隙ありー!!」と撃ち込む…が。


「お前の考えなんてお見通しだよ。ばーか」


口角を上げて立っている夾の手には大きな石。
それを投げ込まれ、高く上がった水飛沫がしゃがんでいたひまりの頭に降り注いだ。

当然、近くにいた夾にも水飛沫が襲いかかり、予想外だったとでも言いたげに目を見開いて驚いていた。


「あははは!!自爆してんじゃん!自業自得だねーあははは!!」

「っるせー!こざかしい真似ばっかしやがるお前に言われたくねェよ」


水面を手で払って爆笑し続けるひまりに水を掛けると、ゲラゲラ笑いながら持っている水鉄砲で応戦する。


太陽は丁度真上に登り、2人のジャレ合う声を聞くようにセミの鳴き声が一斉に静かになった。

もう1人、その声を聞く者がいた。



「馬鹿みたいにはしゃぎやがって…。…紅野、すぐに戻るよ。気が変わった。アイツをこっちに呼ぶ。思い知らせるにはいい機会だ」


そう言って踵を返す慊人の後ろを、紅野は楽しそうに笑うひまりを一瞬見てからついていった。


/ 617ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp