第5章 それぞれの
「とりあえずもっと食え。その内骨だけになっちまうぞ」
「某海賊アニメの音楽家的な?それはこーまーるー」
「あのなぁ。こっちは真面目に心配…ぶっ」
「あはは!隙ありー!油断大敵だよーっ」
ケラケラ笑いながら夾の顔に再度水鉄砲を喰らわすひまりに、握り拳を作ってワナワナと怒りを露わにすると、反撃と言わんばかりに彼女の顔目掛けて撃ちまくる。
ひまりは片手でガードしながら「つめたーっ!」と笑いながら距離を取るために逃げ始めた。
「気が変わった。俺が勝ったら、晩飯に白飯3杯食わせるからな」
「きっつ!それは食欲全開の時でもキッツイやつ!」
ヒィィとわざとらしく怖がって見せると、木の影に隠れて腹を抱えながら応戦し始めた。
「待てコラ!食わす!ぜってー食わす!!」
「やだねー!来ないで!おりゃっっ」
夾は怒りながら、ひまりは爆笑しながらお互い水鉄砲を撃ちまくり、攻防戦を繰り広げていた。
そして、そろそろタンクの水が底をつきそうな事に気がついたひまりは、悪知恵が浮かんだようにニヤリと口角を上げた。
小川の方へ走って行くと、それを背に水を撃ち込みながら夾を待ち受ける。
追いかけてきた夾が「もう逃げらんねーぞ」と勝ち誇ったような顔で迫ってくるのを見て、彼に分からないように口角を上げた。
そして
「うわぁっ!!」
「あぶねっ!!!!」
わざとバランスを崩して見せたひまりが川に落ちるっと焦った夾が全力で走り彼女に手を伸ばす。
その手を掴むふりをして……避けた。
「!?!?」
走っていた勢いのまま川に突っ込んだ夾は、足首辺りまでの水位の川の中で尻もちをついたように座っていた。
それを眺めていたひまりは腹を抱え、目に涙を溜めながら爆笑していた。
「お〜ま〜え〜っっ!!!」
「あはははは!!びしょ濡れだから夾の負けだよー」
ケラケラ笑うひまりに怒り心頭の夾は、バシャバシャと音を立てながら彼女に歩み寄る。
「手ェ貸せ」と手を伸ばすと、涙を拭きながら夾を助けようとその手を取ったその時彼がニヤリと笑った。
「ちょっ……」
声を出す間もなく川へ落とされたひまりは、先程の夾と同じように川の中で尻もちをついて呆然としていた。
「ばぁーか。油断大敵なんだろ?」