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ALIVE【果物籠】

第5章 それぞれの




食事を終えてソファでのんびりしていると、夾からの唐突な質問にどう答えればいいのか分からず「えっ…と…」と考えながら頬を掻いていた。


「お前、卒業したらどうすんの?」


そんなこと聞かれても、私には"卒業後"の未来なんて無いわけで。
誤魔化そうにも考えたこともなかったから思い浮かぶネタが何も無かった。

"物の怪憑き"じゃ社会で普通の人達と肩を並べて働くだなんてきっと無理で。
1人で暮らしていたときは、なんとなくこのままバイトでフリーターで生きて行くしかないかな。なんて考えてたけど、今となってはその必要もなくなった。
どうせ他人とあまり関わらないように生きるつもりだったんだから、衣食住に困らない慊人の元で生きていくのも悪くな…


「おーい」

「え!あ、ごめん。考えごとしてて…」

「ま、卒業っつってもまだ先の話だけどな。そんな考えてねーか」

「き、夾は?どうするか考えてるの?」

「いや、考えてねーよ。…猫憑きだからな。俺は」


考えなしに出た自分の言葉を呪った。
猫憑きはいつかは必ず幽閉される。将来に希望を持つことなんて出来ないんだ。

けど…けど、それでも近い未来の希望は持っても良いんじゃないだろうか。


「で、でも!卒業してすぐだよ!師範の道場で働くとか…」

「……そうだな。そう、すっかな」


夾の声に、なんとも言えない違和感があった。
以前にあったような諦めが混じったような…

なんで…?



「たっだいまー!!!ひまりー!!ひまり会いたかったよー!」


リビングに入ってくるなりダッシュで走ってきて飛び付いてくる紅葉を反射的に避けてしまう。
私に避けられた紅葉はソファを飛び越えて床へと落ちていった。


「ご、ごめん紅葉…」

「ひまりが避けたぁー酷いー」


えーんと泣く紅葉に、夾がいつもの調子で「うっせーよ」と呆れ気味に言っているのを見て、さっきの違和感はただの思い過ごしだったんだ。と言い聞かせた。


「ただいま。ごめんね?遅くなって」

「あー。疲れた」

「由希!春!おかえり。大丈夫だった?」


彼らの元へ行くと「ま、いつもの感じ」と春が怠そうに伸びをしていた。


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