第5章 それぞれの
やっと見つけたビニールシートを持って庭に出るとジリジリと照りつける太陽。
あっつーと口にしながらひまりと夾はビニールシートの端をそれぞれ持ち、バサっと音を立てて地面にそれを広げると勢いのある風が起きひまりの髪を吹き上げた。
その風が気持ち良くて、ひまりが「夾もう1回!もっかいバサーってやろ!」とねだると不服そうな顔をしながらもひまりの要望に応えてやる。
「きゃーっ!ブワッて!これ涼しいー」
キャッキャと騒ぐひまりを見てフッと笑うと、今度は夾だけがビニールシートを大きく上から下へと動かす。
すると先ほどよりも強い風が彼女に吹き、嬉しそうにまたひまりはケラケラと笑った。
そこへ大きなスイカを持った由希と潑春と紅葉が帰ってくる。
「ただいまー!スイカ買ってきたよー!ひまり楽しそうねー!」
「……どんだけスイカ食う気だ…?」
由希と潑春が2つずつ、紅葉が1つ、合計5つのスイカを見て夾が呆れたように目を細めた。
「おかえりー!買い出しありがとう!」
「あれ?紫呉は?」
朝、突然別荘のリビングにいた紫呉の姿が無いことに由希が疑問を抱き、持っていたスイカを置くと辺りをキョロキョロと見回す。
「さっきふらーっと出て行ったよー」
置かれたスイカを撫でながらひまりが答え、夾がスイカをひとつ、広げたビニールシートに置くと「やるならさっさと始めんぞー」と促した。
「あれ?でも棒は?叩き割るなら棒いるよね?」
「叩き割るって言い方やめろ」
以前ひまりから"スイカ割りの起源"の話を聞いていた夾は、不快そうに片眉を顰めて突っ込む。
由希が「棒と目隠しと…」と道具を探し始めたまさにその時
ガシュッッ
「道具に頼りすぎて、いかに自分自身に無限の可能性が有るか…人は忘れる」
潑春が手刀でスイカを叩き割ると、そのまま割れたスイカを手に食べ始めた。
紅葉はしゃがんでいる潑春の後ろから抱きつくと「ボクにもチョーダイ!」と手を伸ばしている。
ひまりはスイカを手で叩き割った潑春に、お腹を抱えて爆笑し始め、由希と夾は呆れたように頭を抱えた。