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ALIVE【果物籠】

第5章 それぞれの




はぁ、と再度ため息を吐きながら階段を登るとすぐに、紅葉が大変だ。と言っていた人物の姿が目に映った。

彼女は仰向けで細長い四肢を投げ出し、大の字で腹を出して眠っていた。

あまりの堂々とした二度寝っぷりに、いつかと同じように夾は口元を引きつらせて「嘘だろ…」と呟く。

Tシャツの袖から伸びた腕は、以前見たときよりもさらに細くなっている気がして、もう一度まじまじと手足を見る。


……痩せた…?

何となく…のレベルだが、夾にはやはり前よりも細くなったように見えて心配そうに目を細めた。


しかし、今はこの二度寝娘を起こしに来たんだった。と思い出し彼女の横にしゃがむと、柔らかい頬をつねって引っ張った。


「おいこら、ひまり起きろ」


ひまりは僅かに眉を潜めて、んー…と声を出すと薄く目を開いて自分を覗き込む夾をその瞳に捉える。

夾は困ったように微笑むと「…おはよ。風邪ひくぞ」と優しく声をかけた。


「この…鬼畜猫め…成敗してやる、覚悟…しろー…」


さらに眉間のシワを深くして途切れ途切れに言うと、また長い睫毛を伏せてすーすーと規則的な呼吸をし始める。

寝言を聞いて額に青筋を立てた夾が、片手でひまりの頬を挟んで思い切り力を込めると、彼女の口がまるでタコのようになる。
その顔に自身の顔も近付けてドスの効いた声で起こしにかかった。


「ふざけんなお前、どんな夢見てんだよ。寝ぼけてねェで起きろコラ」

「すみません…ごめんなさい…お金全部あげるから…命だけは…」

「威勢よかった割にクソ弱ェなぁ?!ってか夢の中なのに負けんのかよ!?」


盛大に突っ込みを入れると、その大声でまたひまりが薄目を開いた。
目が開いたのを確認して、更に夾は顔を近づける。


「お前、次寝たらただじゃおかねぇぞ。さっさと起きろ」

「き、ちく…ねこ…」


その言葉にまたピシッと青筋を立てる夾を、まだ覚めきらない目でボーっと見つめた。
そして、ぱちっと大きな瞳を見開く。


「夾ってば酷い!お金返して!!!」


ひまりが突然、勢いよく起き上がるものだからゴッという音と共に額同士が衝突した。

ひまりと夾はあまりの痛みにその場でうずくまり、額を押さえて声を出さずに悶絶していた。


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