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ALIVE【果物籠】

第5章 それぞれの





鬱蒼とした林の中をずっとずっと走っていた。

この姿でこんなに走るのは初めてで。


直に感じる土の匂いや、体に響くよううに聞こえる虫の声、大きな葉や石。

全てが恐ろしいものに思えて走ることを辞められなかった。



どうしよう。

バレた。

隠したでまま卒業まで皆んなのそばにいたかったのに。

笑い合いたかったのに。



終わった。全部。

怖い。

拒絶されるのが。

怖い。



息がもう持たなくて立ち止まって夜空を見上げた。

その時、ボンッという音と衝撃とともに元の姿に戻る。


それと同時にまた一筋の流星。



欲を言えばずっと一緒にいたい。

まだ見ぬ未来の出来事も、大人になってからあの時は面白かったねってお酒なんか飲んだりしながらみんなで懐かしんで。


けど、そんな贅沢は言わないから、せめて

思い出の箱を楽しいものでいっぱいにしたかった。

残りの時間をたくさん笑って過ごして、

そうしていっぱいになった箱の中身を、ひとりになっても私の命が終わるまで少しずつ思い出しながら過ごしたかった。


少ないよ。まだまだ。

全然足りないよ。


お願いだから、残った時間は幸せに過ごさせて。



木の影にしゃがみ込んで小さく縮こまって自分で自分を抱きしめた。

その感触に裸だったことを思い出す。


なんて滑稽なんだろう。

バレて、逃げて、こんな林の中で裸で。


馬鹿みたい。

どうしようもないことを流れ星に願って。


馬鹿みたいだ。本当に。



きっと由希には拒絶される。


今まで由希は体が弱くてどれだけ苦しんできた?
母親に病弱なことを責められ、慊人にもなじられ、発作で苦しむこともたくさんあって


その元凶は私だ。


慊人の言う通り、受け入れてもらえる筈がない。

拒否されて、二度と顔も見たくないって言われて…。



あの場から逃げてしまった私はもう誤魔化すことなんてきっと出来ない。


言うしかない。全部。


でも怖い。


このままどこか遠くへ逃げてしまいたい。



ザッと誰かの足音が近付いてくる音がしてビクッと肩が震えた。


不審者…かもしれない。



別にいいや。もう、どうなっても。



自暴自棄になっていた私は、その場から逃げる気力はもう無かった。




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