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ALIVE【果物籠】

第5章 それぞれの




そろそろ寝ようか。と紅葉と潑春がお菓子の袋を片していたその時。

物凄い剣幕の由希が、肩で息をしながらリビングに走って入ってきた。


「あれー?ひまりはどうしたの?」

「いなくなった。悪い春、一緒に探してくれないか」


まだ整わない息で告げると2人はグッと眉間にしわを寄せる。

由希が手に持っていたひまりの服を見て、何かを察した潑春はその瞳を鋭くさせて立ち上がり「由希行こ」と、肩に手を置いて足早に玄関へ向かった。

同じくついて行こうとする紅葉の肩を持って由希が止める。


「紅葉はここで待ってて?もしもひまりが1人で帰ってきたときの為にいてあげてほしいんだ」

「でも…でも!もし帰ってこなかったら…?またいなくなったら…」


唇を噛んで下を向く紅葉の頭に手を置くと、由希は真剣な眼差しで紅葉と向き合う。


「必ず連れ戻すから。絶対大丈夫。だから待ってて」


今度は紅葉の返事を聞かずに玄関まで行くと、待っていた潑春と共に由希は玄関を飛び出して走り出した。



「…どこで変身したの?」


走りながら質問してくる潑春の言葉に目を見開いた。
彼が知っていたことに、驚きと僅かな嫉妬が込み上げてきた。


「知ってたのか…春」

「まぁ、ちょっと前に。詳しいことは後。今はひまり」

「…砂浜を抜けて林方面に走って行った。そろそろ姿が戻っていてもおかしくないし、そう遠くへは行ってないと思う」

「わかった…場合によっては怒るけど、ひまり、どうしていなくなった?」


目を鋭くさせたままの潑春がチラリと由希を見る。
砂浜まで出たところで2人は立ち止まった。


「階段から、落ちそうになって抱きとめたら変身して…俺が驚いて見ていたら、逃げるように走っていって…」

「…わかった。ここから二手に別れよう。とりあえず見つからなかったら1時間後にまたココで」


片手を上げると、林の中へと走り去っていった。
残された由希も別方面から林の中へと入って行く。


必ず連れて帰る。
もう失いたく無いから。

お願いだから俺を拒絶しないで。

聞きたいこともたくさんあるから。


約束のことだってまだ聞けてないから。





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