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ALIVE【果物籠】

第5章 それぞれの




昼間の賑やかしい雰囲気とは一変して、夜の海は感傷的にさせる。

響き続ける波音や、潮の香りは闇の中ではより鮮明に感じられた。

暗闇と一体化してしまいそうになる、自身の暗い感情。

唯一の救いは、夜空一面に広がる小さな光達だった。





晩ご飯時。
リビングへ戻ってきた夾は予想通りの仏頂面で、何も言葉を発することなく黙々と食事を取り、さっさと食べ終えた。
また部屋でふて寝でもするんだろうと何も言わずとも思っていた由希、潑春、紅葉だったが、この予想は外れる。


「ひまりと部屋交換した。アイツ寝てっから、起こすなよ」


一方的に話すとリビングを後にした夾。

潑春は無表情で、由希は苦虫を噛み潰したような顔でその背中を見ていた。


何かあったんだろう。ひまりと。

考えれば考えるほどイライラが増して行くその感覚に由希はいたたまれなくなり、立ち上がる。


「悪い。ちょっと…夜風にあたってくる」

「……。ん、いってらっしゃい」

「ヤミアガリなんだから、あんまり無理しないでねユキ!」


2人の言葉を背に、別荘を後にすると海へと向かったのだった。





そして今、由希は寄せては返す波が来ないギリギリのところに立ち竦んでいる。

嫉妬心。独占欲。

こんなにもドロドロした感情を自分が持っているなんて、由希は思わなかった。




「由希!」



ひまりが自分を呼ぶ声に


その瞳に自分が映ることに



心が浮き足立つのと同時に、ドロドロしたものがスーッと澄んでいく。自然と笑みが溢れる。


自分がこんなにも単純な人間だとは思わなかった。



「ダメだよ由希。熱下がったとは言え、夜風なんかに当たっちゃ」


由希は隣に並んで心配そうに見上げるひまりの二重の線がいつもより広くなっていることに気付く。

彼女の前髪を指の背で優しく払うと、その流れのまま親指でまだ熱を帯びている瞼をひと撫でする。


「……泣いてた?」


由希にジッと見つめられたひまりはアタフタしながら、手の平を彼に向けて左右にブンブンと振りながら「違う違う!」と否定した。


「うつ伏せで寝てたら浮腫んじゃって…」


誤魔化すように笑う彼女の笑顔に、由希はチクリと胸が痛んだ。




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