第5章 それぞれの
勝負でビリだった潑春の奢りで購入したスイカのアイスを食べながら4人は別荘に向かっていた。
潑春と紅葉が前で、ひまりと由希が後ろに2人ずつに並んで歩いている。
「ひまり、ガッツリ海に入ってたけど、腕大丈夫なの?」
ひまりの腕には包帯ではなく、肌色の大きめの絆創膏のようなものが貼られていて、由希は普通に海に入っていたひまりに心配そうな顔を向けた。
「もう動かしてもそんなに痛くないし平気!コレ、紫呉が昨日買ってきてくれてたんだけど、凄いんだよ!肌に馴染んで目立ちにくいし水に濡れても剥がれないの!それに2、3日貼りっぱなしでいいんだってー」
スイカ棒を美味しそうにシャクシャクと食べながら、右腕をブンブンと動かして平気なことをアピールしている。
クスッと笑う由希の笑顔がいつもよりも弱々しく感じたひまりは、その違和感を確かめるために由希の前に立ち止まると顔を覗き込んだ。
「由希…体調悪い?」
いきなり顔の近くに現れたひまりに動揺して何も言えずに、由希は自身の頬を少し染めた。
「へ、平気…だよ?」
「嘘。何かツラそう……ほら!やっぱり!熱ある!!!」
由希の額に手を当てたひまりが目を見開いて明らかに動揺し始めた。
「ど、どうしよう。熱ある…。し、しんどいよね?え、どうしよう…は、る…春ー!!!」
アワアワと大袈裟過ぎるほどに焦って少し前を歩く潑春を呼ぶ彼女に、今度は由希が違和感を覚えていた。
「ひまり?多分微熱程度だよ。そんなに焦らなくても…」
「だって…どうしようっ。春早く来て…!」
涙目で由希の服の袖を掴む手も心なしか震えている。
逆に由希が「ほんとに大丈夫だよ」と背中をポンポンと叩く始末。
ひまりの呼び声を聞いた潑春と紅葉は、何事かと血相を変えて走ってきた。
「どうした?ひまり」
「由希が…由希が熱ある…」
ただ事ではない雰囲気のひまりから出た言葉は、正直拍子抜けしそうなものだったが潑春も紅葉も彼女を咎めることはなかった。
「うん。わかった。落ち着いて」
「大丈夫だよー!ひまり!ボクと手繋ごうー」
潑春はポンとひまりの頭に手を置き、紅葉は由希の袖を掴んでいる震える手を握るとギュッと手を繋いだ。